今日パリではロンティボー国際コンクールの本選が行われますが、1983年の優勝者スタニスラフ・ブーニンの同コンクールでの演奏が才気爆発の名演。
話題になった85年ショパン国際コンクールでの『猫のワルツ』以前に審査員、聴衆に衝撃を与えていたことが分かります。
ライブ録音はCD化されていないLPで耳にでき、3位までの受賞者の演奏が収録。当時17歳になったばかりのブーニンの演奏は、優勝を決定づけたという第三次予選でのシューマン『クライスレリアーナ』。会場はシャンゼリゼ劇場。
自伝『カーテンコール』によると、「40度を超える熱の中での演奏であったが、いつも以上の出来栄えとなり『クライスレリアーナ』を弾き終えたとたん、ホールには歓声がこだまし、大拍手が鳴り止まず次の曲に移るまで五分もかかった。音楽という芸術が引き起こしてくれた奇跡」と綴っています。
ブーニンの祖父で伝説的名教授ゲンリッヒ・ネイガウスもこの曲を得意としていて、リヒテルは「師匠のこれ以上ない名演があるから私はこの曲を弾かない」と語ったほど。ブーニン による同曲は世代を超えて受け継がれた名演と言えます。
ネイガウスによる『クライスレリアーナ』
第3次予選の課題曲となったJ.カステレード『セロニアス・モンクを讃えて』についても触れていて、ブーニン のイメージにほど遠い、クラスターで鍵盤をぶっ叩くロック系現代作品をどのように演奏しているのか、ますます聴いてみたくなりました。録音はきっと残されているはず。