漫画トリオは、時事漫才をハイスピードで、トリオで演じた点で演芸史に大きな足跡を残した。

パンパカパーン、は初代フックの気に入りの曲。

本日のハイライト!は吸っていたタバコの銘柄。

そこにノックのタコ踊り。

ウケる型を作り上げた漫画トリオが頂点に立ったのは必然であったかもしれない。

 

漫画トリオが軌道に乗った頃に、パンチ(上岡龍太郎)が大ポカをやらかしている。

大阪から滋賀の仕事に遅刻して、どうしても間に合わず米原駅でそのまま逃げようと思ったらしい。

そこに仕事帰りの喜味こいしが声をかけた。

「おい、パンチ。何しとるんや?皆探しとったで!」

遅刻して連絡していないというパンチに喜味こいしの「アホ、さっさと電話せぇ!」と怒鳴られたそうだ。

結果、ノックからもう仕方ない、風邪ひいた事にするから明日また頑張れと許された。

上岡龍太郎となった遙かのちに、この時を振り返っている。

喜味こいしに声をかけられて、叱られていなかったら?

気まずくなり、漫画トリオにはいられなかったかもしれない、と。

この大ポカは、若き横山パンチになんらかの変化をもたらしたのだろう。

 

上岡龍太郎は、夢路いとし・喜味こいしを深く尊敬していた。

それでいて、横山ノックの描く新しい漫才を体現し、さらにはその卓越した言語スキルを活かす知的芸人の完成形となった。

であるが、上岡龍太郎は芸人だったのだろうか?

横山パンチで漫才師を演じたのではないか、と思う事がある。

それ程に、漫画トリオの横山パンチはノックを輝かせる存在だったと思う。

ツッコミ担当として、旧相方の平和日佐丸の技量は当時のパンチとは比較にならない見事な芸であった。

であるが、ノックを輝かせたのはパンチであり、フックである事は結果が証明していよう。

 

テレビが家庭に定着しつつあった昭和30年代に、漫画トリオの漫才は適応していた。

お茶の間の人気者となり、一世を風靡した漫画トリオ。

上岡龍太郎が逝き、青芝フック1人が残った。