梅雨明けも間近だろうか。

湿気を帯びた空気と

まとわりつくような暑さ。

照りつける日差しがあったかと思えば、

薄雲がかかり陰を落とす。

7月のこんな天気の日には、

必ず思い出す。

心の引き出しがそっと開く。


どうしてるかな。


思い出さずにはいられない。


プールの飛び込みによる

頚椎損傷のMくん。

あの暑い日のあの時間が

ほんの少しでもずれていたら。

あの日。

3時間目は彼のクラスの授業だった。

歴史が好きな彼は

いつもにこにこしてくれてた。

自然と目が向く。

そのクラスの4時間目は体育、

水泳のための着替えがある。

短時間で忙しく着替える生徒に

わずかだが時間をあげたくて、

授業終了のチャイムが鳴る

ほんの少し前に授業を終えた。


「今日も暑いねー。いいなぁ、プールかー。

私は次も授業だよ、4組だよ」

そんなおしゃべりをしたんだろう。


4時間目の授業の途中、

校庭に救急車が入ってくる。

それだけでも異常事態、緊急事態だとわかる。

なんだ、なんだと騒ぐ生徒をなだめつつ

授業を続ける。

4時間目が終われば給食準備。

生徒指導の人と職員室へ状況確認の人に

分かれて、混乱を防ぐ。

そんなときの状況判断って、

今思えば、

現場にいる先生の動きはさすがだな、と。

誰がどう動けばいいか、

瞬時に判断できる。

偶然に組み合わされた

学年(人事)編成とはいえ、

それぞれが的確に動いて

100人単位の集団を動かす力って

なかなかのものだったんだな。


時間が経つにつれ、

情報が入ってくる。

しかしどれも明るいものではなく、

しんどいものばかりだった。

暑いのに全身の血液が冷えていく感じ。

彼は、

首から下の神経伝達がほとんどできない。

動かない。動けない。

これからも変わることなく。


その後

入院先へお見舞いも行ったし、

病室で出張授業もした。

個室の廊下前で深呼吸。

平常心を保つのがやっとだったな。

本当は、

顔を見るのがつらかった。

なんで?

もし、

でも、

と心の中で繰り返す言葉が

喉に張り付いて苦しかった。

彼の未来は

そんなものじゃなかったはずなんだ。

中2、Mくんの夏。

時が戻せたら、と今でも思う。


子を持つ身となった今、

やはり親御さん目線で考えてしまう。

行ってきます、と見送った子が

帰ってこない。

やりきれないな。

事故当日、

校長室から帰宅する親御さんが、

「お手数をおかけしました」と挨拶された。

深々とお辞儀をして。

今でも覚えている。

胸が痛む。


今ごろどうしているだろうか。


今日みたいに

暑くて、晴れたり曇ったりの日は、

あの日がふとした瞬間によぎる。


そして、

生きることの意味を考える。