坂道の先のおじいさん。

自転車を押しながら、
追い越さないように、
ゆっくりめの私。

その後ろ姿は母に繋がる。
ヨロヨロ歩くその姿は、母より元気だったけど。

バス停に止まったおじいさん。
ああ、行き先があって良かった。
どうか早くバスが来ますように。

あちこちに私の後悔が転がっている。
母に優しくしてあげられなかった。
 
救急車の車内で、病院で、
よく回らない口で、
ありがとう を繰り返した母。

心の中で
ごめんねと叫ぶ私。

ありがとうを遮るように、
良くなるよ、帰れるよ を繰り返したのは、
まだまだずっと一緒にいたかったから。

私は死んだら、父と母のところに行きたい。