勤勉で若い彼女の結婚は不運だった。
結婚してすぐに夫は、もう一人の妻を娶った。
それでも彼女は夫を待っている。
恥ずかしそうに、彼女は言った。
彼は私に紅いバラの花をくれたのだから。
私はそれを今も大事に持っている。


若い眼鏡の女は隣の女に言った。
あの人の話し方変ね。
あの人は、その隣に座っていた私のこと。

 
サウジアラビアで勉強をし、先生になったという
その眼鏡の女と相槌をうつその女は、
頭だけを壁にもたげて、足を義母にむけたまま、
横柄な態度で話を続けた。



真夜中の空港で寝ている子供は一人もいなかった。


がらがらのカラチに向かう飛行機には、
PIAの女性職員たちが客として乗っていた。
彼女たちが、スマホの電源を切ることはなかった。


あの騒動から数日後に降り立ったカラチ空港。
一歩外に出たら、おしっこの臭いがむわっとした。


どこの国にも良い人もいるし、悪い人もいる。
けれどその割合は国によって全く違う。

私が美徳だと感じる素地は、
いわゆる教育によって身につくものではないのかもしれない。、
場合によっては、高等教育は人間を高慢にしてしまう
危険を含んでいるのかもしれないと感じた。
特に女たちに、それを感じた。


処女を守ることは、その一族にとっての誇りであり、
紅いバラの花を理由に、嫁ぎ先にのしかかる手段にもなりえるのだと認識した。
結婚ももろもろも、ロマンスではなく、生き抜き勝ち取るための術なのだろう。