特別なことではなく、繰り返される日常。
パキスタン人と結婚をしたらもれなくついてくるDV。
おとなしくみえるご主人だって、ギロリとにらむことがあるでしょ?
からし菜の油の入ったビンを振り上げて夫は怒鳴った。
数日前からの不機嫌は、こういった形で放出されるのが常なのだ。
うら若い女だったら、目の奥に、ウルウル感をにじませただろうけれど、
私はすっかりおばさんで、
それなのに、目の前の夫はガキのままのだ。
「モノをもたないと話せないの?」
私は一切声をあらげてはいなかった。
逆上する夫の問いに
記憶にない・・・と答えたのが発端だった。
お互いにぼけたね~~~と機嫌の良いときには話していたから、
「あなただって、忘れることあるでしょ?」と
説明したところで、火に油をそそぐだけだったけど、
何度も口からでてしまう。
机の上においてあったハサミをつかみ、
怒りに任せて、机に突き刺したのが・・・それ。
こんな大立ち回りをしないと感情のコントロールもできないんだね・・・・って言ったら、
ますます大変なことになってしまうから、飲み込んで・・・
でもうるうると涙を浮かべることもできない私は、
冷たい炎を目の奥にたぎらせて、アイツを見据えた。
立ち上がり、私の持っていた書類を取り上げて、
それを手の代わりに
買ったばかりのファックス電話を傷つけないように、
力任せにその横に並ぶ書類を床にぶちまけた。
散乱した書類を私が片付けなければいけないことが悔しかった。
机の傷は消えないから、私の心の溝も埋まらない。
それはむしろいいことだと思っている。
平成22年11月25日 午後10時すぎ