父の墓石の前で夫は言った。


おじいちゃんは、イスラム教になったからこうやってお参りができるんだよ。

イスラム教徒の人じゃないとお墓に来て、祈ってあげられないんだよ。

だから、おばあちゃんにもイスラム教や神様の話をしてあげなさい。



病院のベッドで、夫は祖母にも父にも言わせたのだ。

ラーイラハ一イッラッラホー


夫の想いに

それを復唱したのは、

宗教云々ではなく、

祖母の優しさ、父の優しさだったであろうに。




イスラム教徒であろうとなかろうと、

理由なしで祈ることのできないその心に

私の気持ちは重くなった。