病室のベッドを囲むカーテンがふわっと揺れたその時に。


彼女は大きな姿を見た気がして。


連絡の取れなくなったご主人を想ったんだって。


だから涙がでそうになって。




看護婦さんじゃなくてよかったよ。


「だって連日の点滴の跡が痛いと思われたら、可哀想じゃない?」




彼女を苦しめたご主人なのに、

彼女が1番会いたいのはご主人なんだって。




友人は私に聞いたんだ。

「20歳も年齢が違う人とどうして結婚しちゃうんだろう」





年を重ねるうちに、その先にある ひとり を怖く思ったのかもしれない。


若い男性は、若いときの自分に引き戻してくれる気がしたのかもしれない。





夜道を自転車で帰るとき。


気まぐれにパラパラと落ちる雨。




暗い道にポツンとあるファミリーレストラン。


明るい店内に おひとりさま は、いないみたい。


その先にあるコンビニで笑っているアルバイト店員は私の子供。




ああ。


雨が降ってよかった。


なんとなくこころが熱いみたいだったから。