.そう、豊かさだってあるんだよ。

それはきっとあなたと私が同じように感じているようなものなのかもしれない。




けれど貧しさは深刻だった。

私たちがここで語るような、”こうであるべきなのに。” ”こうであればいいのに。”

そんな言葉は彼らには届かないであろうぐらいに深くて、濃くて。




ふと気がつくと、人間の命が平等だなんて、思えなくなっていた。


大多数のほこりにまみれた民族衣装をまとったあきらめたような男たち、女たち。



叔父は、年取った叔母と成人してない子供たちを残して突然逝った。

ただでさえ貧しい生活なのに、

それでも彼らには今以上の生活は望めないのだろう・・・な、とため息をつく。

シンデレラストーリーはどこにもない。



学歴があることを鼻にかけてひけらかす女たち。

それは大事なことを履き違えた感があるのだけれど、

そのことに女たちは気がつかない。

知性がないことに、品がないことに。



エスカレータのあるショッピングセンターは、

裕福な人たちの集まるお店だった。

女性トイレの入り口に置いてあるゴミ箱には、

使われた生理用品がティッシュに包まれることもなく、

そのまま捨てられていた。

自分のものだとわからなければ恥ずかしくはない・・・のだろう。




給油中の車から彼女が飴の包み紙を捨てたとき、

夫がたしなめる。

”捨て方というものがあるだろう”

”?”

捨ててもいいけれど、ここで捨てるのは失礼なことらしい。


食べ放題に行ったときもそうだった。

”おいしくなかったらいくらでも残していいんだよ”

兄と夫が私たちに言って回った。

はじめてきた父も母も私も、それはいやだった。

だから、硬くて噛み切れないひき肉を私は飲み込んだ。




バザールを横切るモルビサーブは太ってた。

母は笑って言ったよ。

”貧しい人にあげてほしいと寄付した肉を食べてるからじゃない?”






理想とするイスラムの国を目にすることはなかったよ。


もちろん私はパキスタンのすべてを見たわけじゃないけれど。


礼拝する姿を見たことはあるけれど。