夫が首を締めたとき、

それは冗談だったし、数秒のことだったんだけれど・・・


これがすべての答えなのかもしれないと感じてしまったから、

私は表情を失った。


短い時間だったけれど、

彼の両方の親指は、迷うことなく、

私の首の骨の間にあるやわらかい場所を確実にしとめていたから。


その日の昼間、娘の前で

TVドラマの再放送を見ながら、

そのタレントを指して夫が言った。

「昔はこの人とママは似てたんだけれど・・・どうしてこんなに違っちゃったんだろうね(笑)・・・」

「だって、彼女が結婚して離婚している間に、私は5人も子供を生んじゃったんだから、変わるでしょうよ。」

「パパとママは離婚は絶対にしないよ、別れるときはどちらかが死ぬ時だから」

そんな会話をしていた私たちだった。


病院に再発のCT検査を受けに行く車中で

この冬に予定されている姪っ子の結婚式の話題になった時、

「まだ18歳でしょ?若すぎない」

「娘が16歳になったら、相手の男をさがす努力をし、18歳になったら結婚させるのが一番良いんだよ」

そのときも私の顔を能面のようだった。


予定通りに結婚式が行われれば、この冬は渡パしなければならなくなる。

一人当たり約10万円かかる航空券代。

「こんなにかかるんなら、俺だけ行ってこようかな?」

独り言にしは大きすぎる。

”え~そんなこと言わないで~。私たちも結婚式に行きたい”と演技も出来ず、

”お金がないんだから、あなただけでもいいんじゃない?”と本音を言うことも出来ずに、

聞こえない振りをした。



だから、夫が私の首を締めたとき、

私を殺したりはしないだろうけれど、

私が夫に柔順でなくなった時には、

私の存在を夫の前から消してしまうのはとっても簡単なことで、

子供を取り上げることなんて当たり前のことで、

私の代わりなんてすぐに見つけることが出来るのだろうな。


ご主人に暴力を受けた彼女に、

「つらい気持ちは分かるけれど、それでもとりあえず家庭を動かすために努力してごらん」

とアドバイスをしたことがあったけれど、

それを「出来ないよ」と言っていた彼女の気持ちが、今、分かった気がする。


行き着く先が、ここであるのなら、どんな努力だって無駄に思えてくるものね。



夫が持ってる新型爆弾。

パキスタン人の男が持ってる新型爆弾。

1つの山の頂上から

その山を下りて、谷へ行って、もう1つの山を登る過程を飛び越して、

もう1つの山の頂上に

あっという間に

一足飛びに行ってしまう新型爆弾。


私には凶器(狂気)としか思えない。