父親が圧倒的な力を持つ我が家。

誰も彼には逆らえない。


私の父親はそういう人ではなかったから、

私は強い男を好きになったのかもしれない。


夫が自分の父を尊敬し、愛している様子がうらやましかった。


だから、私は子供達にに夫の悪口を言ったことなどなかった。



それでもこのごろは、

私が友人に夫のことを話す時、

長女がそばにいたりすることもあるから、

それを聞きながら、苦笑する彼女。

彼女に直接打ち明けるという形ではないけれど、

そんな様子から、彼女なりに私と同じように感じていたことがわかったりする。

だって、彼女は15歳。



今朝のことだった。

弱々しいゴキブリが壁を這っていた。

前日の夜に殺虫剤をかけそびれて、生き延びたアイツかもしれない。

殺虫剤を持ってくる私より先に、

夫はほうきでアイツを叩き落した。

動きの鈍いアイツは一撃ででカーペットに落ちたのだった。

そこへ夫が殺虫剤をとどめに噴射した。


夫が長女に言った。

”紙に包んで捨てなさい”

ゴキブリももちろん、アブラゼミもキライな彼女。

ティッシュを手にする彼女に夫は言った。

”ぎゅっとね”

言われるままの彼女。

カーペットの上にティッシュで包まれ、ギュッとされたアイツ。


その後・・・

夫は、言ったらしい。

”もっと・・・”って。

だから彼女は足で踏みつけたらしい・・・。

”何か出てきた~”と言いながら平静を装っていたけれど、

内心はかなりのパニックだったのだろうけれど、

父親の指示でしたことだから、文句など、悲鳴だの彼女の口からは出てこない。

「パパがそんなこと言うからでしょ!」とは絶対に言えない。


夫にしてみれば、冗談のつもりだったらしい。

・・・ばかだなぁ。何でそんなに強く踏みつけるの・・・困惑気味だった。


だいっきらいなアイツを踏みつけて、つぶした彼女は、

たとえどんな命令でも、父親の命令なら聞くのだろうな・・・


私が言ったって彼女は絶対に踏みつけたりしないのに。

要領よく切り抜けられるのに。


これが、私が望んだ父親像だったのかしら・・・

このままいってしまったら、私の望むものではなくってしまう気がする。



親を馬鹿にすることなく、

けれど、嫌なことを嫌だと言える勇気があってほしい。