首都高を走る4WDの車の中で、夫が語った。
彼の父への想いを。
父の怒りっぽい性格は年とともに丸くなるどころか、
なんでもないことに怒り出し、歯止めが利かなくなってしまうということ。
母とも嫁いでいない妹2人とも隔たりができてしまっているということ。
食事をするにも父は1人でいることが多いのだと。
兄だって、積極的に父と共に食事をしようと思っても、
他愛のない会話にも難癖をつけて怒り始めてしまう父を避けるようになってしまったと。
父自身も突然怒りだしてしまう自分のことを悩んでいるのだと。
巡礼に行った時にもカーバ神殿で祈ったのに、
アッラーはそれを望んでいないのだろうか、
父の性格はなおらなかったそうだ。
昔から父の横暴な態度に我慢を続けてきた母も、
口ごたえをするようになったのだと。
夫に言わせれば、むしろ今では母の方が
それは言いすぎなくらいの言葉をはくようになったのだそうだ。
子供のため、親戚のため、良かれと思って、父の指示したことは、間違っていなかった。
けれど、それに従って、
たとえそれが父のいうようにうまい方向にすすんだとしても、
感謝もされないで、恨みをかってしまう父だった。
夫は父に失礼にならない程度に、
言葉を選んで、
話したという。
子供たちはそれぞれが、家族をもって自分たちの道を歩んでいきます。
お父さんやお母さんを見捨てるわけではないのだけれど、
みんながそれぞれの道を歩んでしまったら、
残るのは夫婦なのだから。
そこに亀裂ができてしまっているのです。
お母さんと仲良くしてください。
時々義母と自分の姿が重なる私は、母の気持ちが理解ができる。
ああ・・・・あなたの息子もまるであなたの夫のようです・・・
父を想いハンドルを握る彼の目には涙が浮かんでいた。
自分の気持ちは表せても、
自分の姿は自分で見ることができない。
それは夫だけではなく、
私だけでなく、
それぞれのこと。