誰が予想しただろう。


よりにもよって・・・


皮肉な1日になることを。




夫が宗教に肩入れしていた時期だった。


母や妹たちや弟の手前もあったのだろう。


夫はジャマートの人たちを家に呼んだ。


ジャマートの人たちというのは、グループでよそのご家庭に泊まり、そのお宅の近所の人たちに布教活動をする人たちのこと。


リーダー格の日本語が少し話せるパキスタン人1名と母国語しかわからないバングラデッシュ人数人の彼女たちとそれぞれの幼いお子さんや赤ちゃんが、我が家に訪れた。


夫と弟は近くのモスクに寝泊りをし、そちらはそちらで勉強会でも開いていたのだと思われる。


食事は男性陣が寄付をしたお金で、調理も男性たちで、出来上がったものが我が家に運ばれた。


夫に連れられたパキスタン人の奥さんや、日本人の奥さんが我が家にぱらぱらと集まった。


集まった日本人はパキスタン人のご主人をもつ奥さん1人と娘さん、

私の夫とは違う国のご主人をもつ奥さん2人だった。



ひょんな会話から大変なことが発覚した。


つまり・・・・


ある方のご主人にはもう一人奥さんがいるってことが。




勉強そっちのけの私たち日本人妻。


言葉のわからない彼らから見れば、


一気に熱を帯びる私たちの私語は、


軽蔑されて当然だったろうが、


預言者様が立てひざでご飯を召し上がっていたとか、


一つの皿に盛ったご飯をみんなで、手で食べることが好ましいとか、


この際どうでもいいくらいに、


彼女を励ます言葉と


できる限りのアドバイスを探すことでいっぱい、いっぱいの私たちだった。


よりにもよって、イスラム教のお勉強会で、夫の重婚が発覚してしまうなんて・・・。






ジャマートとして参加された方のお子さんが、


金魚を飼っているバケツに手を入れたり、ボールペンを入れているのを


うちの子供たちが注意をしていたのだけれど、


止めないので、私が注意をした。


”金魚が死んじゃうから、そういうことしないでね”


それでも時々、金魚にちょっかいをだす、6歳くらいの男の子。


彼らが帰ったあとに夫に伝えた。


”ああ、あの子は言うことを聞かないんだよ。モスクでもふざけてばかりだったし・・・でも、ハフィーズ(クルアーンを暗記する人)の勉強をして、がんばってる子供だから、親もしつけには甘いんじゃないかな”


「ふ~~~~ん。(いつものあなたとはずいぶん違いますね?)

そんなにえらいのかね??あの少年より小さいうちの子供だってわかるんだよ。そんなことしたら、金魚が死んでしまうってことが。

どっちが大事なんだろうね?

意味もわからないで暗記することと、命を大切にすることと」と私は憤慨の中にいた。




数日後のモスクに、例の第二夫人が発覚した男が、怒鳴り込みに来たという。


『宗教の勉強だといいながら、くだらない話ばかりしやがって!』


夫から”何を話したんだ!”と追及された私は、


今まで黙っていた、第二夫人発覚のあらましとその事実を伝えると、


一瞬言葉に詰まった夫だけれど、よけいな話をしていた私を一通り怒って、


モスクに取って返した。


あの男が自分の事情を(日本人の奥さんに内緒でもう一人奥さんを持っていたことを)隠して、


モスクで悪態をついて暴れたことを怒っていた。




だれが予想しただろう。


真摯な気持ちをはぐくむ清い集まりの日が、


とんでもない結末を迎えることになるなんて。