あちらの国にいたときのこと。

 

義理の家族は

 

貧しい母と娘を使用人として雇っていた。

 

以前にも別の人たちがいたらしい。

 

物を盗まれたとか、仕事をきちんとしないからとか、

 

さまざまな理由で解雇されたらしい。

 

使用人の仕事は、

 

昨夜の汚れた食器と鍋と朝食のそれらを洗うこと。

 

部屋のほこりをはらい、

 

机の荷物を正しいに場所に並べなおし、

 

床を掃き、

 

水拭きをする。

 

大変な仕事だと思う。

 

貨幣価値が違うから・・・といっても私には重労働だと思うから、安すぎる給料だ。

 

そんな彼らにきつく文句を言う妹がシンジラレナイ。

 

人を指図することになれていないし、

 

その使用人が何か盗みを働かないか、

 

監視をするなんて、私にはできない。

 

それは私がここに住んでいる人間ではないから・・・

 

 

 

一週間に一度の洗濯日にあたる金曜日に、

 

使用人は屋上で一層式の洗濯機を回し、

 

全身びしょびしょになりながら、

 

洗濯機から取り出した衣類を

 

バケツに張った水で、

 

何度もすすぎ、

 

しぼった。

 

ジーンズという厚手の生地を心底うとましく思ったりしながら。

 

だから、

 

その洗濯機が壊れたと屋上から声があったとき、

 

私はいたたまれなくなった。

 

だって、だって、あれほどの洗濯物を

 

いくらベテランといったて、

 

すべて手で洗わなければならないなんて、

 

過酷過ぎる。

 

 

そうだ・・・!!

 

兄嫁が嫁いだ時に持ってきた洗濯機の存在が頭をよぎった。

 

あれを屋上に運べばいい。

 

ここは三階で、

 

屋上は真上だから、

 

運べないわけはない。

 

兄嫁と母に事情を説明し、了解をもらった。

 

さて、どうやって????

 

小柄な私がどうやって運べるだろう。

 

義理の弟に頼んだ。

 

ほら、やっぱり、断った。

 

あんたのご機嫌とるほど私はヒマじゃない。

 

あの年老いた使用人の汗だくの様子が頭をよぎる。

 

義理の弟をなだめることなく、

 

妹に頼んだ。

 

彼女と2人で運ぶことにした。

 

日本製のものよりはるかに重い一層式の洗濯機を運び始めて、階段の途中で、あまりの大変さに音を上げた。

 

・・・・・無理じゃん・・・・後悔した時、

 

義理の弟がむすっとしたまま手伝ってくれた。

 

 

雨などほとんど降らない

 

いつも青空がまぶしいその空のもと、

 

洗濯物に囲まれて汗だくになっている使用人は

 

・・・・いなかった。

 

 

 

彼女は、

 

もう一人の妹と日陰に腰掛けながら、談笑していた。

 

洗濯機が壊れて、一休みしていた・・・らしい。

 

必死の形相で洗濯機を運んだ私の苦労は、

 

洗濯機を運んだ時に階段にぶつけて傷をつけてしまったことで

 

兄嫁に詫びを入れるというおまけつきで、

 

わざわざそんなものもってこないでよ、とでもいうような使用人の視線で、

 

終わったのでした。

 

 

 

そして、私はその娘の使用人からも・・・

 

彼女の洗い物の食器が少しでも減らしてあげたいという思いから、

 

彼女が部屋の掃除をしている最中に、

 

洗ってあげていたのだけれど、

 

注意を受けた。

 

 

”洗わないでください”

 

”私、やることないから、勝手に洗ってるのよ”

 

”あなたが、ちゃんと洗わないから、私、アンティ(義理の母)から怒られるんです!”

 

・・・・・・・・・・・

 

 

日本人の嫁は、使用人にまで怒られてしまったのでした。