夜10時ごろ。
たまに小腹が空いて、近くの駅前のコンビニまで行くことがある。
いつものようにビールとサラダチキンを買って店を出る。いつものように灰皿の近くに立って煙草を吸いながら少し静かになった通りを眺める。
"チリンチリン"
コンビニの扉が開くと鳴る音がした。
隣を見ると見慣れた自転車が。
一分くらいするともう一度鳴った。
白い息を吐きながら寒そうに手を擦り合わせている。首元に回れたマフラーは女子高生らしく可愛いもので、そこから少し上に見える赤い鼻に思わず笑いそうになった。
コートのポケットからスマホを出すとかじかんだ手を頑張って動かしている。寒さで眉間にシワがよっている顔にさらにシワがよった。
溜息をつきながらもう一度店内へ入る彼女。
いつもより少し遅めに出てきた彼女の手には袋に入った卵があった。
私はたまにだけど、夜10時ごろコンビニに行けば必ずいる彼女。名前も知らない。女子高生で部活帰りだってことしか分からないけど、いつの間にか惹かれていた。
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今日もまたいつものように…いや正確には違うか。彼女に会いたくてコンビニへ行く頻度が増えた。
もちろん今日も行けば、彼女は当然のように居る。いつものように彼女が帰るのを見送って自分も帰ろうと思った。
「うわ…」
向こうから歩いてくるのは所謂チンピラ。
3人くらいが下品に歩いている。
嫌だなぁと思いながら煙草を吸っていると
チンピラの1人が私に気づいたようで、こちらに向かってくる足が見えた。
「ねぇ、暇なの?
こんな遅くにさ。危ないよ?」
完全に嫌いなタイプだったから全力で無視していると
「良かったら遊ばない?この後カラオケ行くんだ。オールするつもりでさ笑
女の子いた方がいいじゃん。」
何言ってんのこいつ。なんて思うなんて私も下品だなって思いながら無視を続けていた。
向こうも諦めたのか静かになったと思った。
が、その瞬間、お酒と煙草が混じった匂いが体を包んだ。
「無視すんなよ。」
「…はぁ。あの、しつこいです。
まだ言うなら警察呼びますよ。」
早く帰りたくて面倒だけど答えてやった。
するとチンピラはニヤッと笑って「そうかそうか」
と言っている。ムカついてポケットから携帯を出そうと手を突っ込むと、いつもなら触れるはずのスマホに触れられなかった。
(最悪。携帯忘れた。)
どうしようか。どう切り抜けようかと考えていると、「呼ばないの?」とまだ笑いながら聞いてくるチンピラ。
「呼びましょうか?」
「え?」
急に聞こえたその声の持ち主は
いつも寒そうにしている彼女だった。
携帯を片手にこちらを向いてチンピラを睨みつけている。
さすがに警察沙汰は面倒なのか、チンピラ達は思いのほか簡単にどこかへ去っていった。
「あの、ありがとね。」
「あぁ、いいんです。何もされてないならそれで。」
「あ、待って」
自転車に跨がろうとした彼女を止めて、なにか奢るからお礼に、と伝えた。
「じゃあ…肉まん!」
と今まで見たことの無い満面の笑みで答える彼女。
その笑顔に私はもう、彼女から逃げられないことを知った。