「水源」177ページ上段 より引用開始
オースティン・ヘラーはひんぱんに建設中の邸宅を見に来た。それが次第に出来上がっていくのをしげしげと、いまだに少し驚きながら、見つめていた。ヘラーは、ロークと建設中の邸宅の両方を、細かなところも見流さない探究心で、観察していた。
ヘラーはロークと邸宅を切り離してみることは全くできないかのように、感じていた。
ヘラーは強制されるのが大嫌いな人間であるので、ロークには困惑した。ロークときたら、これも人から強制されることをぜんぜん受け付けない人間なので、彼自身が一緒の強制になるのだ。物事に抵抗する最終的根本原理みたなんものだ。
ヘラーはそれが何であるのか定義できないのであるが。一週間もしてから、ヘラーは自分が障害最良の友人を見出しことを知ることになった。その友情は、ロークの根本的無関心さから生じているものだと、ヘラーはわかっている。
ロークという人間のより深いところにある部分では、彼はヘラーを意識していない。彼はヘラーを必要ともしていない。ヘラーに訴えたいこともなければ、要求したいこともない。
ヘラーは自分とロークの間に引かれた線を感じる。ヘラーが触れることのできない線だ。その線を越えて、ロークがヘラーに頼むことは何もない。
ヘラーからの是認など何もロークは必要としていない。しかし、ロークがヘラーを評価してヘラーを見るとき、ロークが微笑むとき、ロークがヘラーの書いた記事をほめるとき、賄賂でも施しでもない本当の是認を受けた奇妙な清潔な喜びをヘラーは感じるのだった。
引用終わり