「水源」232ページ上段 より引用開始
「何のコンテスト?」
「ええ、だから例のコンテストさ、コスモ=ストロニック社ビルの設計コンテスト」
「僕は申し込みなんてしないけど」
「君が・・・しないだって?全然?」
「しない」
「なぜだい?」
「僕はコンテストに参加しないから」
「いったいぜんたいどうして?」
「ピーター、いい加減にしてくれよ。こんなことを言い合うために、ここに着たのではないだろう、君は」
「本当のことを言うと、僕のコンテスト応募作品を君に見せようと思ってさ。わかっているよな、別に君に助けてくれと頼むつもりなどないからな。ただ、君がどう反応するかと表さ。こう単なる一般的な意見を聞きたくてね」
「キーティングは、もって来たフォルダーを急いで広げる。
ロークはその完成予想図を凝視する。キーティングは、きつい口調で言う。「どうなんだい。いいかい?」
「いや、ひどいね。君だってわかっているくせに」
それから、何時間もの間、ロークは話し説明を重ねた。設計図にいくつもの線を引き、キーティング案の劇場の迷路みたいな構造をすっきりとさせ、余分な窓を省き、いくつかのホールのもつれた仕組みを簡潔にして、無駄なアートいはつぶし、階段はまっすぐに置いた。ロークがその作業をしているとき、キーティングはその作業をじっと見つめていた。空は暗くなり、町のビルの明かりがともった。キーティングは一度だけ口ごもって言った。
「すごいよ、ハワード!なんで、君はコンテストに参加しない?こんな風にできるのに」ロークは、この言葉に対して、こう答える。「なぜならば、僕にはできないからさ。やろうと思っても、できない。僕は、今虚脱状態だから。空っぽなのさ。今の僕では、顧客が求めるものを提供できない。でも、他人のむちゃくちゃなできのものを見たら、訂正することぐらいはできる」
引用終わり