「水源」232ページ上段 より引用開始

「何のコンテスト?」
「ええ、だから例のコンテストさ、コスモ=ストロニック社ビルの設計コンテスト」
「僕は申し込みなんてしないけど」
「君が・・・しないだって?全然?」
「しない」
「なぜだい?」
「僕はコンテストに参加しないから」
「いったいぜんたいどうして?」
「ピーター、いい加減にしてくれよ。こんなことを言い合うために、ここに着たのではないだろう、君は」
「本当のことを言うと、僕のコンテスト応募作品を君に見せようと思ってさ。わかっているよな、別に君に助けてくれと頼むつもりなどないからな。ただ、君がどう反応するかと表さ。こう単なる一般的な意見を聞きたくてね」

「キーティングは、もって来たフォルダーを急いで広げる。
ロークはその完成予想図を凝視する。キーティングは、きつい口調で言う。「どうなんだい。いいかい?」
「いや、ひどいね。君だってわかっているくせに」

それから、何時間もの間、ロークは話し説明を重ねた。設計図にいくつもの線を引き、キーティング案の劇場の迷路みたいな構造をすっきりとさせ、余分な窓を省き、いくつかのホールのもつれた仕組みを簡潔にして、無駄なアートいはつぶし、階段はまっすぐに置いた。ロークがその作業をしているとき、キーティングはその作業をじっと見つめていた。空は暗くなり、町のビルの明かりがともった。キーティングは一度だけ口ごもって言った。

「すごいよ、ハワード!なんで、君はコンテストに参加しない?こんな風にできるのに」ロークは、この言葉に対して、こう答える。「なぜならば、僕にはできないからさ。やろうと思っても、できない。僕は、今虚脱状態だから。空っぽなのさ。今の僕では、顧客が求めるものを提供できない。でも、他人のむちゃくちゃなできのものを見たら、訂正することぐらいはできる」

引用終わり

「水源」222ページ下段 より引用開始


5月も下旬の頃、仕事場の製図台がファーゴのデパートの予想図などで深く埋められている頃、ロークは、もうひとつの設計料を手にすることになった。
その顧客であるホイットフォード・サンボーン氏は、ずいぶん前にヘンリー・キャメロンに設計されたオフィス・ビルの所有者だった。新しいカントリー・ハウスが必要だと決めたときに、サンボーン氏は、他の建築家を進める妻の意見を退けた。

彼は、キャメロンに手紙を書いた。すると、キャメロンから10枚にわたる返事が来た。最初の3行は、自分は引退したと告げていた。後は、全部ハワード・ロークに間末う内容だった。ロークは、そのキャメロンの手紙に何が書いてあったか知らされなかった。
サンボーン氏がその手紙をロークに見せることはなかったし、キャメロンもいっさい何も言わなかった。しかし、サンボーンは、夫人の激しい反対ににもかかわらず、カントリー・ハウスをロークが設計する契約に署名した。


引用終わり

「水源」213ページ上段 より引用開始

2月のある日事務所の電話が鳴った。きびきびした、語気の強い女の声が建築家のローク氏とお会いしたいと依頼してきたのだ。その本午後、活気ある小柄な、肌の浅黒い女性が事務所にやってきた。ミンクのコートを着て、頭を動かすたびにキラキラ光る異国情緒あふれるイヤリングをしている。
彼女は、ロング・アイランドに住むウエイン・ウイルモット婦人である。カントリー・ハウスを建てたいという。カントリー・ハウス建築にあたってロークを選んだのはなぜかといえば、婦人の説明によると、彼がオースティン・ヘラー低を設計したしたからだ。
***中略***」
「それから、もちろん、家の様式はチューダー朝様式が大好きですの」
***中略***
「ほかの建築家のところにいらして方がいいですよ、ウイルモットさん」

引用終わり