「水源」234ページ上段 より引用開始
ロークは、待ちながら事務所の机についていた。朝に電話が一度鳴ったが、それは会いたいと言ってきたピーター・キーティングからのものだった。ロークは、実はすっかりキーティングののことは忘れてしまっていた。
彼は電話を待っている。ここ数週間ずっと、電話を心待ちしている。マンハッタン銀行ビルに提出した設計図に関して、いつでも結果を聞く用意ができている。
この事務所の賃貸料の支払い期日はとっくに過ぎていた。自分が住んでいるアパートの家賃の支払期日も過ぎて久しい。アパート代については気にしていなかった。
待ってくれと家主に頼めばいいだけのことだ。家主が待つのをやめたとしても、それはたいしたことではなかったろう。sいかし、事務所ノに関しては問題だった。
賃貸料は待ってくれるようにビルの管理人には伝えてある。支払期限の延長について依頼したわけではなかった。単にあっさりと淡々と言っただけだ。家賃の支払いは遅れると。知らせたのはそれだけだと。
管理人からの施しを自分は必要としたということ、その施しに大いに自分が頼ったということを自覚することは、彼の心の中では、その行為を物乞いであるように響かせた。それはひどい苦痛だった。そうだ、それはひどい苦痛だ、とロ ークは思う。しかし、だから、どうしたというのだ?それがどうしたというのか?
引用終わり