20代の時、
アルバイトをしていた、シャンソニエで、
初めて 「トラ」という言葉を知った。
「トラ」とは、「エキストラ」の略語として、代役や助っ人を意味する業界用語で、
イベントや音楽業界では、
欠員を補う人を指します。
昔、シャンソニエで
ピアニスト自身が休むときは、
ピアニストがトラを探すのが、
通例のようだった。
先輩歌手たちのおしゃべりに、
来たトラがぜんぜん弾けなかったとか、
あまりに弾けないので、
歌手が弾いたなど耳にした。
数年2回にわたって、
シャンソニエで、アルバイトをしたが、
歌手が休むのは見たことがなかった。
また、何十年か歌ってきたが、
共演者がお休みだったことは
数回あるかないかだった
自分は、
舞台人なので休むという、
発想がなかった。
数年前から
流行伝染病についての考えがかわり、
舞台やライブのスケジュールで、
その旨の掲示を度々目にするようになった。
休むことは悪、の教育に
おかされてることは
重々承知だが、
不可抗力ではない理由には、
どうも合点がいかない。
自己都合にはなんともだ。
どこの店主も
トラ探しには苦労するだろう。
時に思う、
自分の店が
BLUE NOTE TOKYOだったら
自分の身に
起きないのだろうと。
自分の不甲斐なさ、
10年になろう店舗の威厳の無さに
へきへきするのだ。
