売れない俳優だったので、

若い時は、

沢山のアルバイトをしてきた。


芝居の稽古に入ると

何ヶ月も休まなくてはならない為

その度に辞めなくてはならなかった。


芝居が終わると

新しいアルバイトを探す、

その度ごとに、

新しいマニュアルを覚え、

新しい人間関係に対応する。


非常にストレスであった。


俳優仲間で、

いつでも戻れるアルバイトを

見つけているヒトが羨ましかったのを

覚えている。


新橋のシャンソニエ、

『アダムス』

でのアルバイト中、

留学するので、店をやめた。


4年半もいなかったのに、

マスターが電話をくれた。

嬉しそうに、

クミコさんが売れて、

人が足りないんだよと。


きっと、それが

言いたかったのだ笑 

と思ったが、

すごく嬉しかったのを

覚えている。


自費留学して、

お金を使いきっていたので、

ありがたかった。



théâtre Paris Kidori の若手は、

芝居で間をあけて、

戻ってくることがある。


今日

久しぶりに出演するヤカラが

来たそうそう、

オレにコゴトを言われた。


ライブが始まって、


口がすべっただと思うが、

théâtre Paris Kidori 指して


       こんなところで


と言い放った。


軽く言葉に気をつけろと

ヤジを飛ばした、


お客様は笑っていた。


彼には、

書いた伝票には

日付を書いてねと

いつも言っているが


デンピョウニヒヅケナシ。


私は何も言わなかった。


デンピョウニヒヅケナシ。


たったそれだけ

たったそれだけだが


デンピョウニヒヅケナシ。


この数年をふりかえり、


それが彼の

théâtre Paris Kidori への

思いの全てに思えた。


デンピョウニヒヅケナシ。