この日のおじいさんは何か思うものがあるのか、懐かしむ様子で 男の子の人形に話し続けました。
「わしがこの店をはじめたのは、まだわしの息子がお前さんぐらいの歳だったころなんじゃ。ばあさんと2人でいろいろ苦労したもんじゃ。 毎日ほんとうに大変だったよ。
でも、お客の子供たちがわしの作ったおもちゃをうれしそうに抱えている姿を見ると、どんな疲れや病気も吹き飛んで 今日もがんばろう! そういう気になるんじゃ
もちろん息子も小さいころはわしの作ったおもちゃで楽しそうに遊んどったよ。
今では遠い町で働いて とんと顔を見せなくなったがなぁ…
ばあさんもわしを置いて先に逝ってしまった…。
なにより最近では子供たちもわしの作ったおもちゃではあまり遊ばんらしい…
わしもずいぶん歳をとってしまって、1つのおもちゃを作るのもやっとじゃ。
だから、お前さんがわしの作った最後のおもちゃにしようと思っとる。
お前さんがこの店から旅立った時、わしはこの店を閉めようと思っとるんじゃ。」
おじいさんは話し終わると1粒 2粒 涙を男の子の人形の上に落としました。
すぐに涙を拭き人形を元の棚に戻すと、店の奥に歩いて行きました。
この後、いくつかのおもちゃが売れましたが男の子の人形はお店の棚の上で行儀よく座っています。
「もうそろそろ帰るかの。」
そう言うとおじいさんは帰り支度をはじめました。
おじいさんは帰り支度を終えると、人形に近づき
「今日は月が出て、夜空がとてもきれいじゃよ。
お前さんも見てみるがいい。」
と言って人形を夜空の見える窓辺に座らし、
「じゃあ さようなら。」
と言って店を出て行きました。
つづく