色覚を意識して生きる インタビュー⑧(レーシングドライバー編) | 週刊!あやし眼科

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こんにちは。院長の伊勢屋です。

連載8回目となる色覚異常のある大人のインタビュー

今回インタビューさせて頂いたのはレーシングドライバーの根本悠生選手です。


日本で1番人気のあるレースカテゴリーのスーパーGTに2023年から参戦しています。


右が根本選手です。後ろの観客が凄く多いですね。


参戦初年度からチームを牽引し、表彰台にも立つ活躍を見せています。


マシンはLEXUS LC500hです。カッコいいですよね。



2015年からはヨーロッパでレース参戦しています。まさに世界を股にかけて活躍するレーシングドライバーです。


そんな根本選手ですが、色覚異常があるという話を聞いて、今回インタビューさせて頂きました。


色覚検査の結果ですが
石原式検査で2/22
パネルⅮ15でパス
アノマロスコープで2型3色覚

D型弱度、2型弱度という検査結果でした。

根本さんが、色覚異常だと気がついたのは18歳の時の色覚検査だそうです。それまで色についての違和感などは自覚することはなく、海外でレース活動をするにあたり国際B級ライセンス発行時に必要な身体検査の一つとして色覚検査を行いました。レースライセンスの発行には全く問題はなく、その後はヨーロッパでのレース活動を開始します。

色覚異常があると言われたことで、学生時代生物の授業でチョークの色を使い分けるのが好きだった先生のエピソードを思い出したそうです。緑色の黒板に白色からまた白色のチョークに変えて書くことがあり、「なぜなのだろう?」と後で確認したら白色と思っていたのは、だいだい色のチョークだったと。チョーク単体ではだいだい色とわかるけど、緑色の黒板に書いた字は白色に見えて不思議だなあと思ったとのことです。

レースの世界では一度、夕方のレースで夕日と黄色の旗が重なったこともあり、何色の旗が振られているのかわからず、そのことで黄旗無視でペナルティを受けたことがあるそうです。ただその時は他に何人か同じペナルティを受けていたとのこと。それ以外でサーキット走行中に、旗の色が区別できないということはないとのこと。

以前、色覚カウンセリング外来をしていて2型強度の患者さんが信号機の赤と黄色が区別つきにくいとおっしゃっていました。2型弱度でも光の関係で見えにくい、小さい旗、高いスピードで走っていると見えにく条件が重なると見間違うことがあるのですね。

根本さん、わざわざ仙台まで来て頂き、貴重なお話をありがとうございました。

最後に、毎回書いていますが私としては、先天色覚『異常』と、異常という言葉を使うのは、配慮の足りない医学用語であると感じます。
以前は、軽度の色覚異常を「色弱」、強度の色覚異常を「色盲」と表現していました。色盲であっても、色が全く分からないということではありません。そのような誤解もあり、『色覚異常』と変わりました。
現在も色覚異常のある方は、軽度、強度に関わらず自分のことを「色弱」と表現することもあります。私も状態を説明する言葉としては「色弱」の方が良いと感じています。
しかし医学的には、色覚異常と表現していますので、混乱を避けるために『色覚異常』という表現を使わせて頂きますね。