彼は、今、コミュニティのなかの
鳥
と
動物
が、勢力争いをしているのを知っていました。
ある日、鳥に所属する一人の鳥男がコウモリに話しかけました。
「君には、立派で格好いい翼がある。オレたち鳥の仲間だよな。」
コウモリは答えます。
「オレには確かに飛べる羽があるけど、オレは哺乳類だ。純粋な鳥とは言えないだろう。」
鳥の男は、それを聞いて、そうかそうかと笑いながら立ち去りました。
そんなやり取りから数日後、今度は動物に所属する一人の動物男が、コウモリに話しかけました。
「君も哺乳類なのだから、当然俺たちの仲間だろう?」
それを聞いて、コウモリは答えました。
「オレは哺乳類だが羽がある。空を飛べるから鳥に見られることもあるだろう。」
動物の男はそれを聞いて、まあそうだなと、笑いながら立ち去りました。
コウモリは、どちらの仲間にも属そうとはせず、どちらに属するものとも同じ距離を保ちながら、等しく接していました。
コウモリにとっては、グループになること自体に意味がなく、みな同じ存在だったからです。
鳥たちは、動物にも属そうとしなかったコウモリをみて思いました。
「ああ、アイツは゛コウモリ゛なんだな。」
と。
動物たちも、鳥に属そうとしなかったコウモリをみて思いました。
「ああ、彼は゛コウモリ゛なのだ。」
と。
鳥も動物も、お互いはいがみ合って反目していましたが、コウモリに対しては、敵でも味方でもありませんでした。
コウモリには、ただ、そのまま接していたのでした。
おしまい
イソップ寓話
卑怯なコウモリのお話を知ってますか?
派閥をつくっていがみ合っている鳥と動物。
どちらにも好かれようと取り入って、結局どちらからも爪弾きにされたコウモリのお話です。
しかし、私の物語のなかのコウモリは違います。
彼は他の誰かに取り入ること、何かに所属することに価値を見いだしていません。
自分は自分、と相手に伝え、結果周りからそれが認められ、動物からも鳥からも、少し離れたところから微笑みを向けられます。
彼には味方は居ませんが、味方が必要になるような敵も居ません。
さて。
私の物語の中の彼は
いかがでしたでしょうか。