この手のなかに春の花は、夏の花に焦がれる。あんな風に、華やかに派手に、鮮やかな大輪の花を咲かせてみたい。夏の花は、秋の花に焦がれる。あんな風に、品よく美しく風にそよいで咲いてみたい。秋の花は、冬の花に憧れる。あんな風に、力強く命を輝かせて、強烈な印象を与えて咲いてみたい。そして、冬の花は思う。あの春の花のように、暖かな陽射しを浴びて、芽吹きほころぶ歓びを感じて咲いてみたいと。既にこの手のなかにある、その美しさに気づくだけで良い。隣を眺めるその視線を、自分自身に向けるだけで良い。