「あの〜、母が元保育士仲間にもアンパンマンのエプロン渡すって言ってたんですよね〜」
「だから、アンパンマンとかはもしかしたら、他にもあげるかもしれないので分からないっていうか、渡さないほうがいいと思うんすよねっ!」
この期におよんで何言ってるんだこいつは。
素直な私の感想だ。
いや、多分全員がそう思っていたと思う。
「え…いや、でも元々お約束している物しか頂きませんよ。お母様から承諾ももらってますし…ね…?」
誰かが最もなことを言った。
私達は突然「エプロンくれよ!」とこの家に乗り込んできたのではない。
譲ってくれる約束をして、写真を送ってもらって「これならまだありますよ。いいですよ。」と承諾をもらって来たのだ。
しかも日時もしっかり指定されて、自宅まで来いと言われて来たのである。
家の中まで招いて、エプロンまで運ばせておいて何言ってるんだ息子。
お前ママンに頼まれたんだろ????
しかもこの時既に皆が家についてから、約15分は経過していた(エプロン貰うだけなのに。)
そこまで時間を取らせて今更??である。
なら、お母様から事前に「急用が入ってしまったので、申し訳ありませんが他の日にしていただけるでしょうか?」とか、せめて息子が来た時点で謝罪してリスケしてもらえればまだマシだった。
「…ですからっ、私達はお母さまにお約束して来ているんですよ!?」
「お約束した物以外は持っていきませんので、それでよろしいんじゃないでしょうかっ?!」
だれかが声を荒らげて言った。
「いや〜でも、他の保育士仲間にも渡すのあるって言ってたから…勝手に渡すのはまずいと思うんですよね〜。」
「ここの家普段住んでなくて、他の家にもエプロンがあって、どれか分かんないですから☆ミ」
両手を頭の後ろに組むと、トレーナーの裾が上がり、ふくよか過ぎる腹をチラッと見せながら、息子がのんきな口調で言った。(しかもさらっと金持ち自慢)
世界一嬉しくない腹チラである。
っていうか2人産んだ私より肉割れ凄いんだけど、息子お前も経産婦なの???
ショックのあまり別次元のベクトルに私はトリップしていた。
おばさま達とポンコツ息子のそんなやり取りがしばらく続いたあと、とうとう子連れの方が声を上げた。
「申し訳ないですけど、私帰ります!」
「頂けるというから、わざわざ遠くから来たのに、頂けないし。」
「子ども達の前でこういうやり取りも見せたくないので、帰ります!!」
そう言って、男の子を抱っこして立ち上がり、女の子の手を引いて行こうとした。
「え…っ、あの…。」
たじろぐポンコツ。
「皆さん時間を割いて来てるんですよ?!」
とおばさまが言った。
この時点で確か30分は経過している。
私もうんざりしてたし、エプロンなんてもう、しまむらか、パシオスで買えばいいやと思っていた。
「私も失礼します…」
と言って私は子連れのお母さんとその場を後にした。
何やら遠くでポンコツがおばさま方に責められているけどもう知らぬ。
玄関で子連れのお母さんに思い切って声をかけてみた。
「どちらからいらっしゃったんですか?」
ふいに私に話しかけられ少し驚いた様子だったが答えてくれた。
「●●です。」
大体電車で40-50分くらいの場所であった。
子ども連れてわざわざここまで来てエプロン貰えないし、不快な思いまでして…
心なしか、子ども達の表情は暗かった。
自分の母親はイラついてるし、ここまで来て何も得るものが無いなんてあまりにもかわいそうだった。
「これ、お子さんと食べてください」
私は抱きかかえていたチョコパイを渡した。
するとそのお母さんは
「えっ!いいです!だって関係ありませんし…」
と受け取ろうとしなかったので、
「いや、いいです!このままじゃあんまりなんで!お子さんにあげてください!」
と強引に渡した。
「わぁ〜私の好きなやつだぁ〜♡」
小学生のお姉ちゃんが嬉しそうにそう言った。
私はエプロンも貰えず、チョコパイも失った。
ただ、最後にその女の子の笑顔を少し見ることができた。
もうそれで今回のことはチャラにしようと思った。
んなわけあるかい。
私は貰えなかったことと、息子と当事者であるその母親の対応にやっぱりイラついていた。
そこでこの気持ちをどうしてやろうかと考えた。
よし。
ネタにしてやろう。
こうして私はこの話を書き、皆に晒し上げることで自身のもやもやを昇華することにした。
少しでもこれを見た人が笑っていただけるように。
あと、あの子どもたちとお母さんが笑顔でいられるように。
そしてこれを読んでる皆に言いたい。
ジ●ティーのトラブルは気をつけてね!
〜おわり〜
次回予告
後日談編