最近
家の近くに好きなお花屋さんがある




私がそこに住むずっと前から
あるであろう
そのお花屋さん

私はつい最近まで
家から5分もかからない『そこ』を
殆ど利用していなかった





理由といえば
最寄り駅までの通過地点でなく
反対方向だったことも大きい

けれど
それよりも

なんと言うか…
言葉濁さず言うなれば
パッと見

いわゆる
今っぽく洗練されていて
“どこから見てもオシャレな花屋さん”

…ではなかったことの方が大きかった





私は
『そこ』より少し遠い
家から歩いて10数分のところにある

まぁ…その
私が思う

所謂
“今っぽいオシャレな花屋さん”を

数年前、
新しく出来てから
よく利用していた





ただ、
いつからか
どこかその店主の接客の様子や
佇まいが気になりだした事があって


”どうしてこの方は
いつも楽しそうじゃないんだろう…。。”


と…


受け取った
綺麗なお花を小脇に抱え

“あぁ嬉しい”と思う気持ちとは裏腹に
ほんの少し
寂しくなりながら帰宅の途につく

そんなことが
なんともいえず
毎度気になっていた





買ってきた花々は申し分なく美しいので
家に飾ってしまえば
そんな寂しさもすっかり忘れてしまうのだが

でも
いつの頃からか
余りその
“所謂オシャレなお花屋さん”へ
訪れることも少なくなって

それと同時に不思議と
店構えも以前見ていたようには
輝いて見えなくなっていった



私の気持ちがそうさせるのか
事実輝きが薄れたのか
まぁ、
それはどちらでもよくて


ただそう見えた


し、そう変わっていった。





そんな訳で
暫くは
たまたま通りがかったお店で
“いいな。”
と気になる花があれば買う
という風に過ごしていたある日



“なんだか今日は1日家に居っぱなしだな…。”


やや内向的になっている心に
風を通そうと
外の空気を吸いに
プラプラと散歩に出掛けた

そういう時は
大抵いつもは余り通らない
最寄り駅とは反対側のエリアを散歩する

静かなのだ




通り慣れた道で
そこにあることもよく知っている
おそらく昔からある花屋さん

特に買うつもりもなく
どんなお花が置いてあるのかなと
散歩の通りすがり横目で覗いてみた

瞬間
眩しいイエローのラナンキュラスが
圧倒的存在感で目に飛び込んできて
目が離せなくなる

気が付くと
わたしは店に入っていた






そこの店主は

“いらっしゃいませ”
一言だけ言ったあと
黙々と作業をしている

それから
そのラナンキュラスに
暫しの間
見とれている私に気付き

“綺麗でしょう”
とそっと言う







店に入った瞬間から気付いていたのだか
その店主は私の伯母にまぁよく似ていた

加えて言うならば
その伯母は母の姉達の中でも
とりわけ母に面影が似ている伯母で

今も遠方から私の舞台を観に来てくれたり
折に触れて
私を色々気にかけてくれるのだ

私はなんだか嬉しくて
母と伯母と店主と
みんなで話しているような感覚になる





その穏やかさと高揚する気持ちのなか
私の好みと店主のアドバイスも合わせて
アレンジが出来た


それは
いつも私が選ぶ好みのものとは
印象がまったく違っていて

でもそれがとてもとても
今の私には合っていて
新しい風が吹いた気がするものだった

不思議なもので
そのアレンジを飾ったあと
部屋に流れる空気も
また
まったく新しく変わってみえる

いつもの、
新しい花に換えて変わる空気
に留まらない

なにか






ちょっくら
心に風を通そうか。

ふらりと出掛けた先で

本当に
新風を(目に見える形で)
持って帰ってきてしまったような

変な
でも面白くて
この上なく好きな感覚だ





人には分からなくていい
でも
私にはたまらなく


感じるもの