先日「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」というアニメ映画を観てきました。


当初は観に行く予定はまったくありませんでしたが、自分が通っている合気道の道場で若い女の子達が、面白かった!感動した!号泣した!とそれぞれ感想を述べいたので少し気になり観に行くことにしたのです。


劇場は半分くらいは若い女性たちで残りはカップルや家族連れおじさんはどうやら自分1人だったようです(笑)


若い女性に人気の理由はよく分かりませんでしたが、2人の主人公水木というサラリーマンと鬼太郎の父親のゲゲ郎との友情、そして協力して難問を解いていくバディもののストーリー支持されたのだと推測します。


舞台は戦後の間もない頃の日本のとある山里。


青年水木は社命を帯びて影で日本を裏から操っていたとされる謎の一族に商談のために近づきます。

犬神家の一族、みたいな怪しい山里の住人たちとその一族にまつわる謎の秘薬

そこに行方不明になった妻を探しに来た鬼太郎の父親(この時はまだ鬼太郎は生まれてはいません)ゲゲ郎がやって来て、水木と取り引きをし、この村の謎を探ることになります。


と、まあストーリーはこんな感じでアニメのクオリティもなかなか高く見応えがありました。


ここから先は少しネタバレになります。


見終わって自分が思ったのは、これはアニメ映画という姿を借りた日本の政治、あるいは日本社会に対する風刺や警鐘だったのでは?ということです。


映画の中で水木は、戦時中に責任を取らない無能な上官によって部下や兵隊たちが見殺しにされたくさん死んでいくのを目の当たりにします。


しかし戦後もそれは変わらず経済復興という名の戦場で人が使い捨てにされていく。


山里で作られていた秘薬はある種の覚醒剤のような物で、それをその一族は栄養ドリンクのような形で市場に売り出し、疲れ知らずのサラリーマン戦士を量産し日本を再び偉大な国にしようと目論む。


それの企みを見破った水木に一族の長が、仲間になればお前に、富と権力と地位を与えよう、と持ちかける。

そしてその長は、「金、権力、名声これこそが人として生まれて手に入れるべき目標であり、これこそが成功した人生なのだ」と語りかけます。


(ちなみにその秘薬は超人的な能力を持つゲゲ郎の仲間達の幽霊族を捕まえて身体から抽出して作り出す、という酷いシーンが出てきます)


戦後日本は経済的に豊かにはなりました。

しかし、経済的に豊かになるということはあくまで手段であって目的ではありません。


本当の目的は心も豊かになれる生活を手に入れる、だったはずです。


もちろん、富や権力、名声は成功の一側面ではありますが、それは付随して現れるオマケのような物です。

しかし、今を生きる日本人に生きる目的は何なのか?真なる成功とは何か、を問いかけてみれば、富や地位、名声、と答える人は少なくないのではないでしょうか。


次世代に、または後世にいかなる精神的な遺産を残せるかが国家としての目標や使命だと自分は思います。


後世日本について歴史家が「あの国は侍精神を忘れ利得だけで動く商人国家だった。世界に残せたのは漫画とアニメだけだった」と記されるのは少し寂しい感じがします。


アニメ映画にこんな日本の現状に対しての批判的なテーマを持ってくるほど、社会の閉塞感が漂っているのだろうかと感じたりもしましたが、観ていた多くの人はそんな裏テーマはほとんど気にも留めなかったかもしれません(笑)


映画の中で水木はその一族の長の申し出を断り、ゲゲ郎と一緒に長が操る人々の恨みや怨念を集めて作った、狂骨、という妖怪と戦い勝利します。

ただ自分はこの狂骨という妖怪も日本が経済的に成長する過程で生み出された歪みのようにも見えました。


ゲゲ郎が夢見た理想郷はまだ日本には訪れていない映画を観た一人一人が理想的な日本社会とは何なのか?を考えてもらうきっかけになることを願っています。


最近描いたイラストはスケートリンクです。

冬は寒く過酷ですが、それを楽しみに変える発想は大切だと思います。