最近ある本を本屋で見つけ、面白そうだと思い買って読んでみました。

題名は、左遷社長の逆襲 ダメ子会社から宇宙企業へ キャノン電子変革と再生の全記録、と長いですが、この題名に大変興味をそそられました。

現在、世界で民間企業主導による宇宙開発事業が進んでいます。

日本においても例外ではなく宇宙事業に民間企業参入しつつある現在、キャノン電子が大きな役割を果たしているのですが、恥ずかしながらこの本を読むまでは知りませんでした。

この本にはダメ子会社とされたキャノン電子がいかにして再生し、宇宙産業に参画できるまでになったかが克明に書かれていますが、その再生させた酒巻社長がすごい!

酒巻さんはキャノンから子会社キャノン電子に移ったわけですが、左遷というよりは再建を期待されて送り出されたのが分かります。

ダメ子会社を表すエピソードとして、社長に就任した時、キャノン電子の役員は昼間からスポーツクラブで汗をかき、碁会所に通っていた、とか、
優秀な社員は数時間で仕事を終わらせ、勤務時間に自分の趣味のサイトを運営していた…などと書かれています。
もちろんほとんどの社員は真面目に働いていましたが、魚は頭から腐るの通り、下の社員たちもあまり覇気はありません。

まず酒巻は社員に、自覚、自発、自治、の精神を教え自ら考え動ける社員へと意識改革をしました。
それから徹底的に無駄を削ぎ落とし、高収益を生み出す体質に変化させます。

更には現状維持は即脱落であると、経営を立て直した後、蓄えた資金を投入して次世代の基幹産業を育てるべく人工衛星、ロケットなどの宇宙事業を立ち上げます。

鬼の酒巻と言われただけに、現状維持でよいとする社員、定年まで失敗せずやりすごせば良い、と考えていた者たちにとっては厳しく恐ろしい場所になってしまったことでしょう。

しかし酒巻社長は成果を出した社員には給料を上げるなどして報います。

会社が事業を続けて生き残るというのは本当に厳しいものです。

それを知り尽くしているからこそ、成し得た再生であり成功であったと本書を読んで感じました。

酒巻さんがキャノン電子に行くと話があった時、アップルのスティーブジョブズから、うちに来て一緒に仕事をしようと誘われたエピソードか印象的でした。

キャノンにいたとき液晶タッチパネルを酒巻が手掛けていたのを知っていたからですが、その後、そのタッチパネルはiPhoneやiPadで生かされることになるとは驚きです。

日本も上手くやれていれば、アップルよりも早く液晶タッチ画面のスマホを作れていたかもしれません。
実に残念なことです。

経営者には先見性が求められます。

現在、和歌山にキャノン電子も関わっているロケット発射場が建設されています。

早くから宇宙事業を見据えていた酒巻さんは、人工衛星、打ち上げロケット、ロケット発射場、を一体で開発運営しないと利益が出せないと考えていました。
特に宇宙港などが海外にある場合、自由に打ち上げるにはかなりの制約があります。

次世代を引っ張っる産業は宇宙関連になると思われるので酒巻さんの夢が早く実現するのを期待したいです。