それも今だかつて誰も見たことがない本物の綾波が作りたいと頭がアレな私は本気で考え出して、漫画の仕事そっちのけでただひたすら綾波の着ぐるみを作り出した。
と言うかそれまで着ぐるみ的な物は作った事がなかったし、ミシンも使ったことがなく持ってもいなかったのだが友人の主婦に綾波の為に必要なのだと強引に譲り受けたりして本気で作り出した。
そこでエナメル生地の伸びるやつ、いわゆるストレッチエナメルを見つけこれこそプラグスーツの為にある様な生地だと歓喜する…この当時はまだ今ほどエナメル系生地の種類もなく丁度この辺も出始めだったと思う。
そんな感じでユザワヤにてただひたすらにプラグスーツに必要なモノを買い漁る。
材料を見ているだけで綾波やプラグスーツの完成したビジョンが頭に浮かび、浮かれている間に閉店時間になる。たしかこの当時は19時閉店と異様に早かった記憶がある。
そいでもってウチに帰ったらもうひたすらそれから綾波な毎日だった。
まさに24時間綾波の事しか考えてなかった。寝てる時も作りかけのプラグスーツや綾波の面を見ながら完成をイメージして眠りにつく。
全くなんて幸せな日々だったんだろうか…
綾波の事しか考えてないから一切の悩みもなく、まさに人生が綾波色だった。
そんな感じで綾波は完成してそれだけじゃ満足出来なくなった私は連続してアスカまで作り出した。
最初は一緒に面白がっていた友人もだんだん心配になって来たらしく事あるごとに本気でやる気…?とか聞かれたが私にはもう何も聞こえず今度はただひたすらに
あんたバカァ…とアスカを作り始めてしまったのであった。
綾波の事しか考えなかった暮らしを送る内にどうやらプラグスーツを作るスキルも培われたらしい。
人って本気になるとすごいもんなんだ…と今にして思う。
本気過ぎて正気を多分失ってたんだろなぁ…
その喜びたるやまさに絶頂だった。
多分人生の中でも絶頂だったと思う。
それでエヴァ好きの友人を誘い出しお台場にロケーションに向かう。
撮った…ただひたすらに綾波とアスカを撮った…目の前に綾波が…そしてアスカがいる喜び。
この喜びはおそらく何にも例える事が出来ないだろう。
まぁそしたらまた恐ろしい反響で当時芽生え始めていた着ぐるみ愛好の人達に神様の様に崇められた…と言ってもまだごく少数だったけど…ホームページの方には外国の人からもすごい問い合わせでなんかエライ事になってた。
ちなみにホームページの名前は綾波堂って名前で…またどうかしてるなぁ。
この時は無駄に取らぬ狸の皮算用して億万長者になる夢見て楽しかった。
なんか世界中のおたくの人々にワァオ~ジャパニィズ コニッシ~‼︎って世界中から称えられてる様な気になってた。
まぁこの間にあまりに製作に没頭し過ぎて栄養失調に風邪をこじらし心不全まで起こして救急車で運ばれて死にかけてたりもするんだがなんかなぁ…
どうかしてたなぁ…
そいでもって働かないで綾波やアスカ作ってたら気付いたら貯金が一万円切ってた気がする…
って気付けば漫画家もやめてたなぁ…
綾波作って仕事やめてまた違う仕事ついて…ってまぁそんな人生だったのかな…
この当時、個人で着ぐるみ製作の商売もありかな…とも考えたけどとりあえず大手の会社だし安定するし~とほいほい雇われてしまった。
でもまぁこの当時まだ美少女着ぐるみ作ってるメーカーもそうなかったから始めてたら結構草分けにもなれた様な気もする…
というかそう思いたい。
今考えてもなんで作ったんだろ…
まぁこんな所からまた20年経ってまさかまた今、着ぐるみ作ってるとは思わなかったなぁ~
20年前は私の着ぐるみ感性もちょっとリードは出来てた気もするけど今はと言うととてもとても太刀打ち出来ないほどメーカーさんの技術は恐ろしいほど進化しておりますよ。
くそっ…20年前にあの勢いで続けていればもしかして着ぐるみの帝国が作れていたかもしれんのになぁ…とまた妄想に走る。
ともあれだ…
とにかくともあれ…実はまだ死ぬまでに綾波は作る気でいるのです。プラグスーツと共に。まだ自分の中の本物は作れていないので。
けっこう長文書いたなぁ…
ってか綾波作ってる時のエビソードはなかなか語り尽くせないかも。
なにかにトチ狂ってる人間ってやっぱり離れてみてる分には面白いもんですね。