11月17日



あやたんの名前が決まった。あやたんのあやは「綾」。いろんな人の助けで誕生した命。これから、いろんな人と人との素敵な関係の中で育っていって欲しい・・・そんな思いから命名した。



名前が決まりほっとして、午後8時の面会時間終了ぎりぎりまでいたパパは病院を後にした。



午後8時30分。あやたんの主治医の女性医師が病室に駆け込んできた。「肺から出血してかなり危険です。急いでNICUまで来てほしい」と。



ママは、まだ思うように動かない体を必死に車椅子に移動させ、看護師さんに押してもらいNICUに向かった。



緊迫した冷たい空気が流れている。保育器の中に手を入れ、小さなポンプのようなものであやたんの蘇生を必死にしてくださっている先生の姿が飛び込んできた。ガーゼは血だらけ・・・。モニターはずっと赤いランプが点滅している。



一瞬、テレビドラマによくある、あの心拍モニターが「ピー」と波形が平らになってしまうシーンが頭をよぎってしまいそうになった。



ママは、あやたんを半ば叱り飛ばすように凝視して、心の中で「あなたは死ぬんじゃない。生きて、やらなければいけないことがあるから生まれて来たのよ!!」と叫んでいた。



きっと、ママの形相はすごかったのだと思う。状況を説明しようとしていた先生の口が閉じたのを背後で感じた。



パパも病室にやってきた。



肺からの出血、そして血圧の変動のショックで脳も出血しているようだとの説明を受けた。



そしてパパは聞いた。「たとえ1%でも、助かる確率はありますか?」



その気迫に満ちた声に先生は、「はい」と答えてくれた。「それでは、全てを先生にお任せします。娘をよろしくお願いします。」



戻りたくはなかったけれど、ママは病室に戻るようにいわれた。パパはフロアの待合室で待機することにした。



明け方、あやたんの蘇生をしてくれた先生が、コーヒーを買いにパパが待機していた待合室に来た。なんとか容態も落ち着いたようだ。