もう一つ大きな問題があった。
私は大学から一人暮らしをしていた。
そのため、両親とは離れてくらしていた。
兄が亡くなって葬儀などが終わってすぐ、
私は実家にいるとつぶれてしまいそうになると思い、
大学にもどった。
この状況での一人暮らしはとてもしんどいことも多かったけど、前を向けていた。
でも、そこにも後悔が待っていた。
自分で精一杯で、考えることができていなかった。
両親のこと。
父がうつ病を発症していた。
そしてそれを辛いけれど母が支え続け、思い出がつまった実家で、両親の心にも限界が訪れていた。
ごめんね。
私がこっちに逃げてしまったせいで。
ごめんね。
なんとかしなければ。
わたしがみんなの笑顔を取り戻さなければ!
わたしが家族を守る。
そんな決意さえできていた。
家族みんなが笑顔になれるように、今自分に何ができるのか。
お兄ちゃんが仕事ですごい人だったので、仕事で私も家族が喜ぶようなすごい人になるために、何をしようか。
父母に希望をもってもらえるような、
そんな人になりたい。
これからの私はそんな考えが主軸となって過ごしていくことになることは、この時点で決まった。
父母の前では、
私は兄のことで泣いたりすることはなかった。
兄の話で取り乱すこともしなかった。
常に前を向いて、未来の話をすることを心がけた。
誰かの前で、兄のことで悩んだり、落ち込んだりすることは、
それ以来やめることにした。
私にはまだまだやることがある。
このあたりから、私の心の奥には小さな部屋が取り付けられた。