◆アトピーから学ぶこと・・・それはより良く生きるための生き方そのもの! | 皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

山本ファミリア皮膚科 駒沢公園の院長、山本綾子の美肌法則ブログ。つきあう病気とされてきたアトピー を根治させようと奮闘して見つけた、身体から健康になる美肌法則。

こんにちは。今日は、以前ブログで紹介した男子中学生のその後のお話です。(前回のブログは1月11日記載のもの)





幼い頃からのアトピーのせいで、全てに対して「どうでもいいや」という態度をとっていたその子に、私の書いた「アトピー発症機序理論」を手渡したのは、約2ヶ月前。(理論が完成したのが昨年の10月くらいで、文章として書き上げたのが、11月中旬だったので)





できるだけ一般の方にわかりやすく書いてはありますが、それでも基礎医学の細かい話が書かれており、中学生には少し難しいかと思われました。





ですが、この男子中学生が「自分の身体のことを、自分で責任をもつ」ためには、「自分の身体の中で、どんなことが起こっているのか?」について知ってもらう必要があると感じました。





もちろん、受診の度にお話はしていましたが、「耳で小分けにして聞く」、というのと、「まとまった文章を読み、全体像を把握する」、というのでは理解度が違ってきます。(これは、大人でも全く同じです)





さて、その「アトピー発症機序理論」を読んでもらって1ヶ月後の受診日。





診察室に入ってきて、椅子に座った彼を見て、私はびっくりしました。





何度何度言っても絶対に治らなかった猫背が初めて治っていました!!





お母様にお聞きすると、「アトピー発症機序理論」を読んでから、自宅でも本人さんが姿勢に気をつけるようになったとのこと。親がうるさく言わなくても、自分から気をつけているのだと。





そして、「アトピー発症機序理論」を読んでもらって2ヶ月後の受診日。





私はさらにびっくりしました!




目つきが変わっていたのです!!!




今までのような、「全てがどうでもいいや」という表情から、


自分をしっかりと持った、大人の表情へと変化していたのです!!!





これまでのように、治療の話をしても茶化すようなことを全くせず、「自分の身体のことだから真剣に聞こう」としているのが、すぐにわかりました。





彼は、まだ中学生ではありますが、「自分の身体で何が起こっているのか?」ということを理解することによって、「自分」「自分の身体」というものをしっかりと認識し、「自分の身体は自分で責任を持たねばならない」ということを悟ったのです。





(後でお母様にお尋ねしたところ、やはり自宅でも「自分の身体」であることを認識するようになり、以前なら背中の軟膏も塗ってもらって当たり前だったのが、「背中の軟膏を塗って欲しい」と自分から頼むようになったのだそうです)




素晴らしい成長だと思いました。




そして、大きく成長した彼に、私はこのようにお話しました。




「○○くんは、本当に大人になったよね!




以前だったら、姿勢が悪いよ、って何度言っても治らなかったのに、本当に姿勢がよくなった。しかも、診察中ずっと、いい姿勢を保ってる。





それにね、先生は今日、びっくりしたよ。





目が、表情が大人になったよ!自分をしっかりと持った大人の表情になったよ!





○○くんは、小さな時からアトピーでたくさん辛い思いをして、悔しい思いをしてきたけれどね、





いま、アトピーを通して、本当に大切なことを学んでいるんだよ。





姿勢、呼吸、歩き方、食事、物の考え方などなど。


そしてなにより、「自分を大切にする」ということ。





これって、何だと思う?





そう!「生きる」ということそのもの!





これらのことって、「より良く生きてゆくための生き方、そのもの」なんだよね!





きみは、本当にアトピーで辛い思いをたくさんたくさんしてきたけれど、その分、人生で最も大切なことを学んでいるの。





きっと、今、同級生の誰よりも、きみが一番大人だと思うよ。


きっと、アトピーのない同級生なんか、こんなこと、考えたこともないと思う。誰も、こんなこと、知らないと思う。


本当は、人生で本当に大切なことなのに。





アトピーになって良かったとは思えないだろうけれど、今、アトピーを通して本当に大切なことを学んでいることは誇りに思ってね!」




この患者さんのこれからの成長が楽しみで仕方ありません。




ずっと遠回りをしてきたけれども、ようやく、スタートラインに立ったばかり。




これから思春期を迎え、「自分」というものについてさらに考え、悩んだり、苦しんだりすることはあるでしょう。




3歩進んだと思ったら、2歩戻ることもあるでしょう。




でも、必ず、この患者さんは、大きく羽ばたくのだと、このとき、私は確信しました。




もっともっと大きく成長した彼が大人になったとき、どんなに立派な人間になっているのか、まだまだ先ではありますが、ワクワクしながら見守りたいと思います。