こんにちは。
今日の「診察室から」ネタは、「脇の湿疹」です。
日々診察をしていると、新しい発見にあふれていて、ブログに書き留めて行かないと忘れてしまいそうなくらい、診察時間は発見、驚きの連続です。このアトピー発症機序理論というものは、私の診察スタイルを180度と言っても過言でないくらい、変えてしまいました。
前置きはさておき、早速本題に行きましょう。
30代女性。10月頃から脇のところがかゆいと受診されました。脇と言っても、前から脇に手をまわして、ポリポリと掻く、アトピー患者さんなら皆さんきっと掻いてしまう、あの場所です。からだをみても、脇以外は本当にきれいで、乾燥すらありません。もちろん、この女性はアトピーではありません。脇に湿疹があると言っても、言われなければわからないほどごく経度。皮膚のすぐ近くでじ~っと見て、ようやく、ぷちぷちと毛穴が盛り上がったくらいの湿疹が見える程度です。
さあ、原因を考えてください。
え?これだけのお話からどうやって推測するのって?
それをできるようにするのが、アトピー発症機序理論です。
なぜその部位が赤いのか?なぜその部分に血液がたまってしまうのか?
そうですね。10月頃からというのも、少しヒントになるかもしれません。寒くなってきて、血流が悪くなりだす頃ですよね。
さて、私もすぐにはこの患者さんの背景まではわかりませんでした。皮膚は専門でも、占い師ではありませんからね。
でも、こんな質問をして、患者さんからの答えを聞いて、二人して納得してしまいました。「あ、本当だ!」と。
私の聞いた質問はこれでした。
「あの、いつも仕事などで、こんな格好になりませんか?」
私は、体の前で大きなボールを抱えるような格好をして見せました。
そして、彼女の答えは、Yes!
なんと、この患者さんは歯科医でした!そりゃ、職業柄、そんな格好をしますよねえ。患者さんの口の中を触るときに!
あまりに、私の質問がビンゴだったので、患者さんと二人して笑ってしまいました。
このとき私が考えたことは、こうでした。
脇という部位の構造から考えると、肩が前に引っ張られているのではないかと。それを表したのが、”体の前で大きなボールを抱えるような格好”。
そして、私の説明はこう続きました
「いつもそんな格好でお仕事をされているから、脇の下の筋肉が引っ張られているんですよね。だから、その部分が固くなって、うっ滞が起こる。湿疹ってうっ滞している場所にできるんです。」
この患者さんは、職業柄、体の構造を知っていましたから、この説明で、すっと理解されました。そして、いつものように、その部位の筋肉を伸ばすストレッチを聞いて、軽いステロイドをもらって、笑顔で診察室を後にされました。
きっと、この患者さんは自分の体で「どうしてこの部位に湿疹ができるか」を理解されたので、しばらく私が教えたストレッチをまじめにやれば、お薬などほとんど使わずとも湿疹を治してしまうのでしょうね。
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「湿疹はなぜできるのか?」という大まかな原則というか、考え方を一旦身につけてしまうと、こんなふうに、アトピーであろうと、アトピーでなく、ただの湿疹であったり、脂漏性湿疹であったりしても、どのように対処すれば、根本的に治せるか、が自分でわかるようになります。
今日はこの部分に湿疹が出たから○○に気をつけよう、とかね。
今までは、「憎っくき湿疹」だったのが、「はいはい、そこね、そこね」と余裕を持って対処できるようになります。
それが、自分の体を知るということです。以前「自分の体で何が起こっているか」イメージすることが大切とお話しましたが、「ぶつぶつが出た、いやだなあ」で終わらず、「ぶつぶつがここに出たから、自分の体は今こうなっている。だから、対策としてはこれをする」これが、すっとわかるようになれば、アトピー卒業はすぐそこです。