ずいぶん、寒くなってきて、患者さんからも「風邪をひいたら悪くなりました」の声がときどき聞かれるようになってきました。ということで、今日は「どうして風邪をひいたらアトピーが悪くなるの?」というお話。
経験上、風邪をひくとアトピーが悪化するというのは、なんとなく皆さんご存知なのだと思います。はっきり認識していなくても、思い出してみれば、たしかに風邪をひいたら悪くなっていたな、みたいな。
なぜだと思います?
私はアトピーを発症していませんが、実はアトピー体質です。(これについては後日、また、書こうと思っています)
そんな私が、風邪をひくと、いつも決まって、手がカサカサします。
もともと手荒れをしやすい質でした。(子供の頃は、よくひび割れがひどくて、教科書に血がついてました・・・)また、子供が生まれてからは手を洗う回数も増えましたし、医師という職業柄、手を洗う回数も多いので、もともと乾燥しているというのはありますが、それでも、皮膚科医である以上、あまりにひどい手荒れになっていると「ヤブ医者」と言われかねませんので(笑)、自分の手のケアには人一倍、気をつけています。(ひどいときにはマイザーを使います)
それでも、風邪をひくと、テキメンなんですよね・・・
風邪をひくと、手の皮膚に「水分が足りない」のが実感できます。もちろん、風邪のひきかたがひどいときは、顔のカサカサも自分ではわかります。化粧ノリが悪いわあ、みたいな。
なぜ、風邪をひくと、皮膚がカサカサするんでしょう?
私は、こう考えています。
皮膚は、体の臓器の中で面積は最大だけれども(この事実もスゴイですよね!)、命に直結する臓器ではないので(例えば、脳とかは命に直結してます。脳が死んだら、体も死んでしまうので)、血液が来るのも「後回し」にされてしまうんです。血液を回す順番は、命に大切な順番なんですよね。皮膚はいつだって「後回し」。
ほら、寒い日に外に出ると、手足が冷たくなりますよね?
あの時も、手足の血管をきゅっと細くして、なるべく温かい血液が寒い外気に触れないよう、手足は犠牲にしてもいいから内臓を守ろうと、「防衛反応」をしています。
で、風邪をひいたときをイメージしてみましょうか。
風邪をひいたときは、風邪のウィルスや菌をやっつけるために、鼻やノドの風邪のときは、鼻やノドへ、お腹のときはお腹へ、バイキン退治のために、戦いの現場へ血液が流れ込みます。バイキンをやっつける白血球に現場で頑張ってもらわねばなりませんから。
風邪をひいたからといって、血液が急激に増える訳もなく、1人の人間のもつ血液量は同じですから、戦いの現場へ血液がどっと応援に行ってしまうと、「後回しの皮膚」にはあまり血液が来なくなるんですよね。だから、カサカサになる。
ほら、なんだか、自分の体の中で、何が起こっているか、少しイメージできませんか?
実は、これ、風邪のときだけじゃ、ないんです。
「1人の人間のもつ血液量は同じ」ということをベースに考えると、「顔が火照るのに、どうして手足が冷たいの?」とか「どうして冷え症だと手足が冷たいの?」とかいう疑問の答えも見えてきます。(これらに関しては冷え症のテーマで書こうと思っています)
「自分の体で何が起こっているか」をイメージする。
これは、アトピーの治りのいい人たちがやっていることです。
筋トレにしても同じです。ただ同じ動きをしているように思えても、「どの筋肉を動かしているか」を理解しながら運動する人と、理解しないで「表面的だけ」やっている人では効果が全く違うとよく言われます。
アトピーでも、効率よく根治に近づくためには、「自分の体で何が起こっているかをイメージ」できることが必要です。
実際、そのイメージ度(理解度)により、治療成績が全く違うのは、私も体験済みです。