劣等感を持つ人間はプライドが高いと言う。
プライドが高くて、劣等生である自分を受け入れられないのだ。
一度受け入れると、自分が崩れ落ちる気がした。
そして、努力してもダメな自分が現れる、真の劣等生である事が分かってしまう事を恐れた。
劣等生は生きて行く資格が無いように思っていた。
では何故バレエで断トツの劣等生である事を簡単に受け入れられたのか。
それはバレリーナになりたい等、これっぽっちも思って無いからた。
バレエを始めたのは偶々だ。
更年期と運動不足でブクブク太っている自分が怖かった。このままでは、夢の世界旅行に行く体力が失われる。そんな恐れからだ。
ヨガを習った事も何度かある。プール通いや散歩もした。どれも続かなかった。
2年前のある木曜日、ネットサーフィンをしてると、シニア向けの記事が流れて来た。
大人バレエが書いてあった。
身体が固いとか関係無しに始める人が多いと言う。
これだ!と思った。
近所の公民館でバレエの子供達を何度か見掛けた。大人クラスもあるかも知れない。
その場でネット検索して、連絡先を見つけ、土曜には見学に行った。
見学の筈が、勝手に見よう見真似で動いていた。
その後通い始めても、先生はちっとも私の方を見てくれなかったが、それで良かった。
ガチガチの身体が悲鳴をあげた。
そうして三回通って、20年以上悩んでいた腰痛が治った。
そう、私は腰痛予防と体力づくりの為バレエに通っている。
勿論上手くはなりたい。もう少し何とかなりたい。
でも、舞台に立ってスポットライトを浴びたいとは思っていない。
私の劣等感は、スポットライトを浴び、称賛されたら消えると思ってた。
それでは一生消えないだろう。
そんな事は起こらないから。
私は一心不乱にバレエをしている時、幸せだ。
マインドフルネスのように、何も考え無い。
端から見て、タヌキの化物の盆踊りであろうが、どんなにみっともなかろうが、構わない。
他人の目を気にせず、一生懸命やれると言うのは何て心地よいのだろう。
高い目標に届かなくて、やる前に諦めるよりも、うんと低い目的で一心不乱に取り組むのはなんと気持ち良いのだろうか。