どれくらい、眠っていたのだろう?
サトシは、浮き上がる意識の中で
甘い隠微な香りが漂ってくるのを
感じていた。
薔薇?
ここの庭園に、薔薇はなかったけれど。
いや、薔薇の香りより
さらに、妖しい甘さ。
…これは、、媚薬?
まだ覚め切らないまま、
サトシが手を伸ばせば、
温かく柔らかな感触がある。
すっと、指で辿ると。
「…ん、、」
と、掠れた声が聞こえてきた。
「カズ?」
ようやく、瞼を開けて
指の先に、視線をむければ、
白い滑らかな頬に辿りつく。
「起きてしまった?」
カズが、サトシの隣に身体を横たえた。
サトシの指は、吸い付いたかのように
カズの頬を撫で続けている。
寝台が、軽く沈んで
二人分の重みを支えている。
どちらからともなく、
サトシとカズは
顔をわずかに傾けて、ゆっくりと
唇を重ねた。