部屋を出てすぐ隣にあるチェ尚宮の病室から診察を終えたのであろうか医師が退出するところであった。
その医師はシンを見るや軽く会釈をし病状を説明した。
「お付きの方は比較的傷も浅く先ほど目を覚まされました。ですが今は気が動転しているのか少し興奮気味ですのであまり刺激を与えないようお願いいたします。」
「・・・わかりました。」
そして扉が開かれる。
真実に少しでも近づく為に。
シンが現れた事で横たえていた体だが急いで居ずまいを正そうとするチェ尚宮。
シンはそれを手でそっと制した。
「そのままで構いませんよ、少し話を聞きに来ただけです。」
そうは言っても長年皇族に仕えてきた者にとって、皇太弟が立ち自分が寝そべっているこの状況はなんとも所在無いものである。
「殿下っ。。申し訳ありません、お側に付いていながら妃宮様をお守りする事ができず、この様な事態に・・・。」
皇族との対面の理も忘れ自らの口を開き感情を露わにする様はいつもの彼女からは想像できないものであった。
物静かで淡々と業務に取り組む彼女は皇族のあいだでも信頼が厚い。
だからこそチェギョンに付いて行きたいという申し出にも宮の復旧に尽力して欲しかった所だが渋々承諾したのだった。
「あなたに非はないでしょう。無事でよかったです。あたなに何かあれば妃宮が悲しむ。」
「勿体無い。。。お言葉でございます。」
これで少しは落ち着いただろうか。
事件の本題に入ろう。
「事故のこと、何かわかることはないですか?」
どんな些細な事でもいい、何か犯人に繋がるものはないかと必死に耳を傾ける。
「あの車に乗ったのは偶然なのです。妃宮様と私は領事館での用事を済ませたら歩いて買い物へ出かけてから帰宅しようとしておりました。たまたま雨が降り出してきたので送っていただく事になったのです。」
「つまり妃宮を狙ったものではなかったと?」
チェ尚宮はゆっくり頷いたがシンは難しい顔をし考え込んでいる。
「それは逆にチェギョンの動向を知る事の出来る領事館内部の者ならば犯行に及べたとういう事でもありますね。」
「・・・・確かに、そう捉える事もできます。」
「領事館の者に詳しく聞く必要がありそうだな。」
そう言ったシンの視線を感じ取ったのかコン内官は主が求めているであろう答えを丁寧に申し上げた。
「領事館館長ファン・スンウ氏は本日午後こちらにお見えになるそうです。
警察の詳しい調査結果もその時お持ちになるそうですが。」
流石長年共にしてきた間である、期待通りの回答にシンはただ静かにうなずくのみであった。
シンは再びチェ尚宮の方に向きなおるといつになく落ち着き穏やかな表情で口を開いた。
「ではチェ尚宮はゆっくりと体を休めてください、今まで独りで妃宮に仕えていたんだ、負担も大きかったでしょう。
じきに妃宮も目を覚ましまたあなたの力を貸していただくことになる。今はゆっくりと休み体を直してください。」
「負担など。。妃宮様と過ごしたこの半年は学ぶべき事も多くかけがえのないものでございました。
殿下のお心、感謝いたします。」
宮にいた頃の彼女とはどこか違う、表情が豊かになったとでも言おうかこれもまたチェギョンの影響なのだろう。
チェ尚宮の言葉に満足したシンはチェギョンのもとに戻りたい事もあって話しが終わると早々に部屋を後にした。
再びチェギョンの眠る部屋へと足を踏み入れベッドの側にある粗末な椅子に腰を落ち着かせた。
今はただ息遣いをする彼女を見つめていられるだけで十分であるかのように優しい眼差しを向けている。
「殿下、館長がお見えになるまではこちらでお過ごしください。私どもは廊下で待機しております。
それとこちらを・・・。」
差し出されたそれは淡いピンク色の封筒。
手にとりまじまじと見つめるとそこには見慣れた文字でこう記されていた。
『シン君へ』
「これは?」
「お渡しするのが遅くなり申し訳ありません。妃宮様よりお預かりしていた物でございます。
殿下のお手紙をお読みになり、すぐ返事を出したいとおっしゃられ私がお預かりしておりました。」
自分の出した手紙を思い出し少し恥ずかしくもあったがそれよりもチェギョンからの手紙がうれしかった。
逸る気持ちを抑えつつ「それでは失礼いたします。」と言ったコン内官が廊下でに出るのを確認し、ゆっくりと封筒を開く。
段々と昇る日の光が温かさを増していく。
頬に当たるその光が今日の暑さを予感させた。
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Ep5の④
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