「それでは、いただきましょうか」
太皇太后様の一言で始まった昼食会。
今日は東宮殿のパビリオンを使って家族皆でテーブルを囲んでいるの。
あの時とは違って少し家族が少なくなって寂しく感じるけれど、久しぶりの家族団欒、やっぱり食事は大勢で食べる方が楽しいわ。
いつもはシン君と二人、以前の様な距離はなく小さなテーブルで向かい合って食べているけれど、シン君は忙しくって一人になる事も多い。
だからこうやって色々な話をしながら皆で食卓を囲む事はとっても幸せな事なの。
「妃宮が帰国してからずいぶんたったけれど、ようやく皆揃っての食事会ができたわ、ごめんなさいねなかなか予定が合せられなくて」
私の向かいに座るお姉様がすまなそうにそう話す。
私が帰国して2ヶ月近く経つ、けれど半分は入院をしていたし、9月に入ってからは大学生活と忙しかったから仕方のない事だ。
「いいえ、お姉様。こうやって皆と食事ができるだけで幸せです」
「そお? やっぱりいつもシンと二人じゃあれよねー……そうだ! チェギョン、時間が合うときは私とランチしましょう。あっ、でも大学で忙しいわよね……、なら少しお茶をするだけでもいいし、おいしいケーキでも用意してもらって、ね!そうしましょう」
「本当ですか! うれしぃー!」
決してシン君との食事がつまらない訳ではないけれど、ケーキの一言につい心が躍ってしまい、見事につられてしまった。
お姉様の提案に喜んで話を弾ませていると、私たちの隣でお祖母様が寂しそうな顔をして箸も進んでいないようだ。
「お祖母様どうかしましたか?」
あまりに暗い顔をなさっていたから気になって声をかけてしまったけれど、返ってきた言葉はあまりに意外……いいえお祖母様らしいものだった。
「ヘミョンばかり妃宮と楽しそうではないか……?」
「なぁに、お祖母様、もしかして仲間に入りたいのですか?」
そうやっていたずらっぽく話すお姉様の言葉にますます口を尖らせて拗ねてしまわれるお祖母様はなんだかとても可愛らしい。
「やだ、そんなに拗ねないでよお祖母様~、もちろん大歓迎よ、女の子同士の楽しいおしゃべり会ですもの、ね! チェギョン?」
「もっちろん! お祖母様またドラマの話で盛り上がりましょうよ!」
するとお姉様の隣に座る人が、なにか言いたげにそわそわしているのが目にはいった。
ふふ、そんな所はやっぱりシン君にそっくりで親子なんだなって実感する。
私は思い切って声をかけてみた。
「お母様も是非! 楽しいお茶会になりそうだわ、わくわくしちゃう♪」
「ふふ、私も誘ってもらえるだなんて嬉しいわ」
女だけの会話に花が咲く。
ここに来たばかりの時は、お祖母様やお母様と会うだけでも緊張して、言葉を交わすなんて事できるはずもなかった。
どこか皆よそよそしく、冷たくて、家族って思えなかった時もあった。
けれど今は自然と会話が弾む、温かい食卓に、笑顔が広がって……あぁ私はこの家族の一員なんだって、今は心からそう思えるの。
「すっかり、私とシンは置き去りだな」
「そうですね、でもあんな中に飛び込んだら何をされるかわかりません」
「はっはっは、そうだな」
「ちょっとシン、聞こえてるわよ」
女同士の会を設立するのは楽しいけれど、二人を仲間はずれにするのは何だか申し訳なかった。
そこで私は前々から考えていた事を提案する。
「上皇陛下、お茶会にはお誘いできないけれど、これからまた以前のように映画鑑賞をご一緒させて下さい。私の体調を心配していただけるのはとても嬉しいけど、陛下と見る映画とても楽しみにしていたんです! シン君の勉強にもなるし、ね、いいでしょ? シン君」
「僕はチェギョンが望むなら構わないけど……」
「それは願っても無い提案だ、無理をさせない程度にお誘いするよ。ところで妃宮?」
「はい陛下、なんですか?」
「皇太后はお母様でなぜ私は陛下なのだ?」
「あっ……」
陛下の突然の申し出にその場にいた全員が笑みをもらした。
答えを詰まらせている私にお姉様が助け舟を出すように割って入ってくれた。
「それはお父様が退位されても変わらず威厳に満ちていらっしゃるから、チェギョンとしては軽々しく呼べないわよ。
でもお父様ったらそう呼んで欲しいのよ、かわいらしい所もあるでしょ?」
「これヘミョンなんて事を言うの陛下の前で」
たしなめているお母様もどこか楽しそうに笑っている。
私はといえばそんなやり取りにも苦笑いをする事しかできなかったけれど……。
「陛下が許してくださるなら私もお父様とお呼びしたいです」
「もちろん、妃宮そなたも家族の一員なのだから」
「はい! お父様」
9月も終わりに近づくにつれ日差しがやわらかになってきた。
こんな暖かな日がずっと続けばいい、そんな事を考えていた。
照りつける日差しからも暑さを感じなくなる秋
穏やかなに見える空にも嵐が迫っていた
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