仕事柄王族会の者の名をおおよそは知っていると思ったがやはりパク・テヒョンには心当たりがないようだ。
ファン館長にパク・テヒョンの人となり最近の動向を聞かせてやると僕や姉さんと同じ考えにたどり着いた。
チェギョンの帰国を阻止しようとする王族会の一派があるという事に・・・。
「殿下、パク・テヒョンに心当たりはありませんが・・・王族会に関係の深い者。
それも一番殿下の敵になりそうな者チェ・ジチャンの息子がここに勤めております」
「チェ・ジチャン・・・・」
チェ・ジチャン・・・その名を聞いてすぐに思い出した。
王族会の中でも強い権限を持ち次期最長老の座を狙っているとの噂もある。
だが現在の王室のあり方について我々と意見が合わず反発を強めてる者。
外での噂もあまりいいものはなく危険な存在。
それでも古くから皇室に仕えて来た家系である為邪険にもできない存在。
「チェ・ジチャンほどの家の者が何故海外の領事館に?」
「あの人は・・・・以前はチェ家の会社でそれなりの役職についていたそうなのですが、
あの・・・言葉が悪いですが、あまり有能な者ではなかったそうです。
ジチャン様にも見限られたそうで・・・仕方なくこちらへ」
大会社のバカ息子って所か・・・。
そんな者の犯行だろうか?だがジチャンに頼まれている可能性がなくもないか・・・。
やはり証拠にはならないが調べていけば何かわかるかもしれない。
「そいつについて調べられますか?」
「おまかせください。必ず何か証拠を探してみせます」
「頼みます」
ファン館長との話が終わると入れ替わりのようにコン内官が入室してきた。
女王陛下への報告を察してか僕のパソコンを持参したようだ。
「殿下、陛下への報告ができるよう準備がしてございます。皆さん報告をお待ちのようですが今お繋ぎいたしますか?」
「ありがとう、繋いでください」
しばらくするとパソコンの画面には多忙な公務と心労からかいつもより冴えない顔をした姉さんの顔が映し出された。そばには父上もおられるのだろうか、声が聞こえる。
『シン、ご苦労様です。チェギョンは大丈夫?』
「はい、陛下。チェギョンの顔も見ていただきたかったのですが、報告を先にしたくて」
『いいえ、無事だとわかればそれで良いわ。ゆっくり休んで早く元気になるよう伝えて。報告を聞きます』
「まずチェギョンについてですが、順調に回復すれば2週間後にでもそちらの病院に移せるそうです」
『そう、わかったわ。こちらでもそのように準備を進めます』
事務的な報告にもチェギョンの容体がわかってか姉さんの表情も明るくなる。
『それで事故についてはなにかわかったの?』
「いえ、まだ確信できるものは何も・・・。ですが領事館職員の中にチェ・ジチャンの息子がおりました」
『ジチャンの息子ですか・・・。その者が怪しいと?』
「まだわかりません・・・館長に調べてもらっているところです。ですが、可能性はあるかと・・・。
そちらでも何か動きがないか調べてくれませんか?」
『わかったわ、シン。何かわかれば連絡をいれます。それと・・・』
そう言いかけて、なにやら画面の向こうでは父上と相談している声が聞こえる。
大人しく待つしかない僕はあちこちへと視線を泳がせる。
しばらく待たされた後予想もしていなかった命令を受ける事になる。
『シン、あなたの帰国に関してだけれども、チェギョンと一緒に帰国しなさい』
「えっ・・・2週間も・・・こちらに滞在していいのですか?」
『じゃあすぐにでも帰国する? そんなチェギョンを置いて来れないでしょう?』
僕の驚きの顔とは裏腹に姉さんはいたって楽しそうなイタズラ顔である。
『ふふっ、もともとねチェギョンが帰国したら、しばらく二人でゆっくりしてもらおうと休みを取ってあったのよ?
それを繰り上げたと思えばいいわ。そのかわり! 帰ったら大忙しよ皇太弟殿下っ! 』
「フッ・・・ありがとう、姉さん」
遅くとも2、3日中には韓国へ戻らなくてはならないと思っていた僕にとってこれ以上ない嬉しい知らせだった。
チェギョンと共に帰国できる。チェギョンを守る事ができるのだ。
そう思うとうれしくてたまらなかった。
その夜
僕はコン内官が止めるのも聞かずチェギョンの病室で泊まる事にした。
離れていた分傍にいたかったのだ。
あれからチェギョンはまた少し目を覚ましたが今ではすっかり眠ってしまった。
息遣いが少し荒く額に手を当てるとひどく熱っぽい。
いてもたってもいられなくなった僕は枕元のボタンを押す。
すぐに駆けつけた医師によって診察がされたが、医師はいたって落ち着いていた。
「殿下、この発熱は術後よく現れる症状です。ご心配はいりません。
妃宮様のお体は今元に戻るよう懸命に戦っている証拠でございます」
「そうですか」
「少し寝苦しそうですので氷枕をご準備いたしますね。殿下もお休みください、ずっとそのままでは殿下がお倒れになりますよ、それこそ妃宮様が悲しまれます。」
そういわれて僕は苦笑いを浮かべるしかなかった。
確かにチェギョンを看病する為だけにここに着たのではない、夜が明けたらまだやる事は沢山あるのだ。
でも今はこの繋いだ手を離せずにいた。
汗ではりつく髪をそっとかきあげ額の汗を拭ってやる。
少しでも気分が楽になるように、今夜はずっと付いていよう。
星空が雲で覆われていく。
だがひと際輝く一つの星だけは、その輝きを奪うことはできなかった。
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Ep5の⑧
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