某日都内 チェ・ジチャン邸
「旦那様、パク・テヒョン様とテウク様がお見えでございますが」
「わかった」
家政婦の言葉に静かに答えたこの男、チェ・ジチャン。
年の頃は60過ぎ、人並みに老いを感じる風体だがその眼光は鋭く大きな野望を秘めている。
(テヒョンが何用かな。息子も連れてくるなど…おおかた私のご機嫌取りだろうに)
冷徹な笑みを浮かべ客人の待つ部屋へと歩き出す。
「ジチャン様、突然の訪問申し訳ありません。息子がどうしてもお会いしたいと…」
テウクはすかさず立ち上がり深々と頭を下げる。
この若造に用件があるのかと一瞬嫌気がさすがそこは年長者の余裕を持って受け応える。
「いや、構わんよ。テウク…だったな?大きくなった。
昔うちのジソプと遊んでいた頃はまだほんの幼子だった。いくつになったかな?」
「お久しぶりです、ジチャン様。今年で32になりました」
「ほう、そうかそうか。して要件とは?」
さして用事があるわけでもなかったが、長話をするような相手でもないと思いさっそく本題へときってでたジチャンである。
一方テウクは王族会の大物を前にしてもいたって落ち着き払っており、
逆に父親といえばそわそわと落ち着かず汗を拭いては携帯を手にしまた視線は中を泳ぐ。
テウクが話を切り出そうとした途端、テヒョンの携帯が鳴った。
「す、すみません、少し失礼します」
どうやら会社からの電話らしくテヒョンは席を外した。
テウクにとっては父親がいない方が話しが進めやすく好都合である。
「まもなく皇太弟夫妻が帰国なさいますね、また王宮が騒がしくなります」
「と、言うと?」
「妃宮様が居られるとまた不祥事が起こるのではと案じている者も少なくありません。
ジチャン様もそうは思われませんか?」
「ずいぶんと遠回しな言い方だな」
それもそのはず、テウクの父、テヒョンに帰国反対の為支援をしてきたのはジチャンである。
その者にチェギョンが居ない方がいいのではないかなど当然の話である。
「これは失礼を。妃宮様のマカオでの一件、犯人は帰国反対派の王族関係者と言われているそうですがジソプ様は領事館にお勤めでご心配ですね」
「お主、何が言いたい、ジソプが犯人だと疑っているのか?」
「いいえ、そうではありません。私がジソプさんにお願いしたんですよ、妃宮様の乗るお車のブレーキオイルを抜くようにと」
「な、なんとっ! どういう事だっ!」
出来損ないの息子をなんと言われようと涼しい顔をしていたジチャンが急に声を荒げた。
自分の息子が仮にも皇族である妃宮を事故に遭わせた事に焦りを見せ始める。
それは決して息子を心配してのものではなかったが…。
「妃宮様の帰国を阻めばジチャン様に認められるのではないですか? と言うと快く引き受けて下さいましたよ。幸い領事館の者ならば簡単に行える事でしたので」
「なんということだ…」
「心配はいりません、証拠になるようなものは何もでないでしょうから。私が捕まるような事があり口を割らなければ…ですが」
「私を脅してどうしようというのだ?」
さすが、王族会でも大きな権力を握り常に人の上に立ってきた者である、話が早い事に満足気な表情を見せるテウク。
「脅すなどととんでもない。今日はただ協力を仰ぎに来ただけでございます」
「協力?」
「はい、これから王室に起こるであろう嵐の為に…」
テウクはジチャンへ、事の全貌を話して聞かせた。
すると先ほどまでテウクを侮蔑していたジチャンが高らかに笑いその手を取った。
「ハッハッハッハッハッハ! 気に入った! 気に入ったぞ、そなたの事」
「ありがとうございます」
「テヒョンなどの息子にしておくのは勿体無いくらいだ。私の息子がお前だったらな」
「そのように言っていただけて光栄です」
「それではこの先の成功を祈って祝杯をあげようではないか、おい誰かいないかっ」
ジチャンがその場から去ると、テウクは笑わずにはいられなかった。
これで大きな力が手に入ったと…。
空には点々と小さな雲が浮かんでいる。
やがてその雲は大きな暗雲に飲み込まれていく。
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