今日は周りの奴らがやたらと騒がしい日St.バレンタインデー。
俺はといえば興味も無ければもらうのはゴメンだとさえ思う。
今日一日は憂鬱である。
いっその事休んでしまおうかと考えたけれど、こういった日に限って公務がない。
ため息まじりに読書を続けているとギョンの奴が楽しげに会話を振ってきた。
「今年は俺幾つ貰えるかな~?」
「そんな不特定多数に貰って何が嬉しいんだ?」
インの意見に賛成である。
すると傍観していただけの俺になぜだか火の粉が降って来た。
「分かってないなー、バレンタインは男の価値を決める神聖な行事だぞ。そりゃぁシンはヒョリンから貰えるから良いんだろうけど…。他の子はこっちに回してくれよなっ」
「ふっ、なんだよそれ」
回せるものなら喜んで回してやるよ。
口には出さなかったがそんな思いでいっぱいだった。
休み時間なるべく人が少ないところへ逃げ込もうとした俺はピアノでも触って時間を潰そうと個室へとやって来た。
椅子に腰掛け蓋に手を掛けた時、ふと窓の手すりに置いてある小さな箱に目が留まる。
普段なら見ぬふりを決め込む所だがそのセンスの良い鮮やかなラッピングを施されている箱が妙に気になってしまった。
手にとって小さく振ってみる。
カラカラと軽い音を立てている所から見ても中身は今日の日に相応しい物だろう。
どこかに贈り主の形跡は無いか隅々まで見てみるが特には見つけられない。
せっかく時間をかけて作ったであろうチェコをこんな所へ忘れるなんてずいぶんと可笑しな奴だな。
見も知らずの落とし主を思うと自然と笑みがこぼれた。
しばらく外を眺めながらどうしたものかと考えていると、扉を叩く音がした。
その向こうにはヒョリンが笑顔で立っていた。
俺はとっさに手にしていた箱をポケットけとしまいこんだ。
なにも隠すことはないはずなのに……。
「こんな所にいたのね、探しちゃった」
「何か用か?」
「はい、コレ。シンはこうゆうの嫌いかと思ったんだけど、私が作りたくて。受け取ってくれる?」
「あ、あぁ貰っておく」
「そう、ありがとう」
恋人からのプレゼントにもう少し喜びを表現した方がいいかと思うがそう言ったものは苦手である。
ヒョリンもそれを分かっているのかたわいない会話をしてそのまま教室へと帰って行った。
学校から帰宅し、自室へと戻り一息つく。
結局俺の右ポケットにはあの箱が綺麗に収まっていた。
机に二つ箱を並べてしばらくの間眺めてみる。
恋人に貰った物があるというのに、なんだか浮気心があるみたいで後ろめたいが……。
偶然めぐり合わせたかのように俺の元へとやってきたこの箱にどうにも先に手が伸びてしまった。
華やかに結い上げられたリボンはほどく事をためらわせるほど。
アクセントにつけられたオーナメントは手作りであろうかバレンタインらしくハートを模った不思議なデザインである。
ようやく箱が顔を出し、蓋を開けると見慣れた形のチョコレートが行儀良く並んでいた。
「アルフレッド、お前の友達が沢山いるぞ」
隣に座る俺の友達に良く似たクマの形をしたチョコ。
食べる事もためらわせてしまう。
あんなに綺麗なラッピングの中身がコレか?
あまりのギャップにまたしても顔が緩んでしまう。
そもそも男に贈るチョコをこんなに可愛いクマにするか?
ドジで抜けてる奴かと思いきやすごく繊細できめ細かい所もある。
けれどやっぱりどこかずれていておかしな奴だ。
チョコを貰ってこんなにも相手の事を考えた事はない。
いや、俺が貰った訳ではないがこんな贈り物なら素直に喜べるとそう思った。
こんな奴が近くに居たらきっと楽しいだろうと……。
いつかこの贈り主に会えるだろうか?
後一年余りの高校生活にも密かな楽しみができた。
こんな発見のあるバレンタインも悪くないかもしれない。
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