オトンの検査が終わり、ER受付で名前を呼ばれた頃には弟も病院に着いていた。

先生に「まずはこちらでお話いいですか?」と、オトンのベッドとは逆方向のERの診察室へ誘導される。
所謂「ご家族の方だけで」というヤツ。

「検査の結果、、これは(仮)なんですが。。

 お父様は十二指腸癌の可能性が高いです。
 CT画像をこうして見てもらうと分かると思うんですが、肝臓とリンパにも転移している可能性が高いです。」


(仮)

転移


全く想定していなかった訳ではない。
ただ、先生の言ってくれた「(仮)」は、先生のせめてもの優しさにしか見えなかった。
見えなかったと表現するのは、この時の先生の目がとても真っ直ぐだったから。

嘘のつけない先生なんだろう。
今日の処置は止血まで。

生検に回す細胞を取るのは明日以降。
この時点では確かに確定診断には至らない。

私の長男が同行していた事も影響しているかもしれない。
「全てが確定ではないですが、色々とお話し合いをして頂いた方がいいと思います。」
 

きっとこの先生は、とても聡明で、そして優しい。

せっかちで心配症な私は、思い切って先生に聞いてみた。
「先生?全て(仮)だとして。それが全て当たっていた場合、これは所謂ステージⅣという状況なんでしょうか?」

「そうですね。(仮)ですが、十二指腸癌ステージⅣの可能性が考えられます。ただ、全てが(仮)の状況で、こうしたお話をするのも申し訳ないんですが、まだ何も確定はしていません。」

(仮)が例えば50%だったら、患者の家族に対して確定前にこんな説明はしないだろう。
私が従事している業界なら、まずしない。
このニュアンスで言って来るって事は8割確定って事か。

そんな事を思いつつ、先生には丁重に挨拶をして病院を後にした。