化粧を落として、私は私に戻る

彩を終える瞬間は、
化粧を落として湯船に入った時だ。

クレンジングでメイクを落としていくたびに、
少しずつ「彩」が剥がれていく。

ファンデーションが落ちて、
アイメイクが消えて、
鏡の中に残るのは、仕事を終えたあとの自分の顔。

そのまま湯船に浸かると、
張っていた気持ちが、ゆっくりほどけていく。

スマホも見ずに、
ただぼーっとお湯に浸かりながら、
今日会った人たちのことを、少しだけ思い出す。

あの人は元気そうだったかな、とか。
ちゃんと楽しんでもらえたかな、とか。

少し疲れるやり取りもあったな、とか。

良かったことも、
少ししんどかったことも、
お湯の中でゆっくり溶けていく。

そんなふうに、
少しずつ「彩」が遠ざかって、
「私」が戻ってくる。

静かに、ゆっくりと。

今日も無事に終わったと、
やっと実感できるのは、
きっとこの時間なんだと思う。