ウクライナ復興には、いくらかかるのか。世界銀行の試算によると、ウクライナの復興にかかる費用は今後10年で54兆円に膨らむ見込みだという。戦闘が長引けば長引くほど、復興費用はかさんでいくに違いない。
復興に協力するのは当然としても、心配なのは、G7広島サミット議長国のトップとして高揚する岸田首相が、サミットを通じて巨額支援に前のめりになる可能性があることだ。総額54兆円も必要となると、日本は5兆円近くは負担せざるを得なくなるのではないか。
1991年に湾岸戦争が勃発した際、日本は米国を中心とする多国籍軍への“財政支援”をさみだれ式に表明し、最終的に総額130億ドル(約1兆8000億円)を負担。ところが、国際社会の反応は「too little too late」(少なすぎるし、遅すぎる)と冷ややかだった。
■必要なのは「投資型援助」
2兆円近い支援をして国際社会から批判された過去を踏まえると、“支援疲れ”に喘ぐ欧米諸国の手前、岸田政権は少なくとも数兆円規模の復興支援をウクライナに拠出する可能性がある。国際ジャーナリストの春名幹男氏がこう言う。
「復興の後押しは重要ですが、日本にそんな国力と経済的余裕があるのでしょうか。これまでのような贈与型支援は無理があると思いますし贈与するなら差し押さえたロシアの外貨準備資産を充当するのが妥当でしょう。ウクライナの先端産業や資源開発に『投資』をする形で支援し、日本の産業にもある種のリターンがあるような、ウィンウィンの投資型援助が望ましい。ただ、ひと口に復興と言っても、どのような産業を育て、経済を再建するのか、道筋を描くのは容易ではありません」
戦争終結が最重要課題だが、悲しいかな、国際社会が「岸田外交」に和平交渉の主導的役割を期待しているフシはない。
皆さまも、お大事に。