No.2 噂って怖い?
「待ったか?」
「ううん、今ちょうど着替え終わったとこだよ。」
「そっか、よかった」
「午後の講義はどうしたの?」
「先生の都合で休講になったんだ」
「そうなんだ。」
「そっちは?今日はさぼり?」
「ちがう、午前中に変更になったの」
「そっか、俺のためにサボったのかと思ったよ」
「まさか、、あははっ
ねぇ、ところでどこに行くの隼人?」
「お腹すいたから、何か食べようか。何がいい?」
「アフタヌーンティーがいい!この前話したでしょう。40周年記念メニューなの!」
「じゃ、そこにしよう」
隼人ったら覚えていてくれたのね!
嬉しい!
少し話しただけなのによく覚えているなぁ・・っていつも感心する。ここで待ち合わせしたのは、わたしの願いを聞くためよ。まぁ、連れてきてくれるって分かっていたから、話したんだけど、ふふふっ。
「どうだ理学部?」
「うん、いいよ。」
「男ばかりだろ」
「だからいいのよ、面倒な女の子同士のトラブルも聞かないし」
「そのうち、男が声かけてくるよ」
「それはない、だってねもう煙たがれてるもん。私の周り、だーれもいないよ。女子は固まってるし。」
「1ヶ月か、よくバレないよな。感心するよ。」
「うふっ、そうでしょう。だって洋服にも気を付けてるし、リュックだって弟のお古だし。髪型も団子にしたりおさげにしたり工夫してるのよ。一応、努力してるから・・」
「それ、努力なのか?あはは。まぁ、ゆりがいいならOkだけどな。」
隼人はわたしの事をさゆりでなく、ゆりと呼ぶ。みんなと同じ呼び方は嫌だからと言っていた。もぅ、隼人ったら可愛いんだから。
「そういえば、噂になってるよ。カッコイイ1年がいるって。」
「そっか、まぁ気にしないだろ」
「気になんないけどね。誰かに言い寄られてない?」
「おっ、気になってるのか、嬉しいな。」
「なによ、聞いただけでしょ。」
「あははっ大丈夫だよ。言い寄られても、俺にはゆりがいるから。だろ?」
「まぁね、その点隼人はいいわね。私に言い寄ってくる男なんていないもの」
「それはどうかな?」
「どうして?」
「どんなにダサい恰好していても、その人の本質は見えるものだよ。見える人には全てが見えるんだ。まるで、見透かされているかのようにね。でも大抵の人は見えないけどな。そんな人が近くにいるかもしれないぞ。」
「やめてよ。嫌だそれ、考えたくない。隠れてる意味がないじゃん!見える人ってどんな人よ!」
「そーだな、無口もしくは、正反対でよく笑うタイプ。それでいて、よく周囲を観察して、気が利く奴。あと自分から話しかけないが、頭が切れる奴も要注意だ。」
「えー、そんなこと言ったら、全員じゃん。あーぁ、そんなの気にしたくないよ」
「気にしなくていいよ、バレる奴にはバレるって事を覚えておいて欲しいんだよ。その時、慌ててミスらないようにな。」
「うん、そうする。」
「高校の時、楽しかっただろう。友達いっぱいいたし、後輩のファンクラブだってあったじゃん。みんな優しくしてくれて、嬉しいって言ってたのに。なんで大学は一人がいいんだ?しかもH大学の理学部なんて・・」
「別に何かあったわけじゃないよ。ただ疲れたの。みんな私の事よくしてくれるけど、いつも周りには誰かいたし。私が望まないことも色々しなきゃいけなくて、正直しんどかったの。
わたしの時間なんてなかったから。
すこしほっといて欲しいと思っても、必ず誰かが私を探していたし。だから地元の子が少ない大学を選んだだけ。それでいて女子の少ない理学部にしただけよ。」
「あ、生徒会か。まぁ、仕方ないよな。あの時は周囲も先生もゆりを押していたからな。そうだな、大学は一人で楽しむのもいいかもな。そのうち気の合う友人でもできれば、また気持ちも変わっていくだろうし。ゆりの好きなようにするといい。」
「うん、そうする。」
生徒会長をした3年生の時は、特に大変だった。色々なことがあったし、とにかく忙しかった。予備校も通いながらの学校生活は、時間が足りなかった。
「でも、ゆりも噂になってるぞ。探してるぞお前の事」
「えっ!!誰が?」
「今年入った1年に美少女がいるって噂になってる。しかも名前も公表されてるぞ」
「どうして・・・」
「予備校から漏れたらしい」
「でも、、、」
「あぁ、大丈夫だ。旧姓で探しているよ」
「はぁ・・・・よかった・・。」
「しかも、俺がゆりって呼んでたから、お前の名前「深見ゆり」になってる。あはは、ウケるよな。絶対見つからないよ」
そう、お母さんが再婚し大学進学を期に名前を変え「深見さゆり」から「上江洲さゆり」になったから。だから名前で探しても見つからないはず。よほど私に近い人でなければ、わたしだと気が付かないはずだ。
「ふー、よかった。この生活、本当に気に入ってるの。だから誰にも邪魔されたくない。」
「そんなに勉強して楽しいか?」
「医学部にいる隼人が言う言葉?」
「まぁ、そうだな、あはは。」
「楽しいわよ。休み時間も、お昼時間も、放課後だって自分の好きにできるのよ。こんな楽しい事今までなかったもん」
「そっか、何かあれば相談しろよ」
「うん、わかってる」
「それから、約束は守るんだぞ。」
「うん、隼人も守ってね」
「あぁ、わかってる」
わたしは隼人から同じ大学に行くと聞いた時、驚いた。だって、内地の大学に行くと思っていたからだ。県内なんて選択肢はないと思っていた。ご両親もそのはずだったから、きっと落胆したに違いない。どうやって説得したのか・・・聞くのも怖い。
でも私は嬉しくなかった。
また大学でもカップルとして噂され注目されるからだ。
だから、隼人には約束してもらった。
大学ではお互い他人でいようとお願いしたのだ。始め隼人は不満げだったが、私の話をじっくり聞いて最後には納得した。わたしは幾つかの約束をさせられた。大学では話かけないが、私が困っていたり緊急事態の時は関係なく行動すると。まぁ、私が隼人に心配をかけなければいい訳だから、答えはOKだった。
「それで、約束の日はいつがいい?」
「ねぇ、行かなきゃダメ?」
「約束しただろ?俺に寂しい思いさせて申し訳ないと思っているんだろう?」
「ニヤニヤしながら言わないでよ!わかった。行けばいいんでしょ」
「嬉しいね~、でいつがいいんだ?」
「じゃ、月曜日のお昼でどう?」
「それでいいよ」
「もう、荷物多くなるから嫌なのに。」
「俺が持ってやるよ」
「それじゃ。バレるでしょ!!」
「あはは、だな。」
「もう!」
隼人との約束の1つ。
それは月に1度だけ、
隼人の彼女として
大学構内でランチを一緒にとることだった。
こんな約束するんじゃなかったと後悔している。今更ながら、失敗だったと。荷物が多くなるのも嫌だけど、何よりバレないかハラハラしそうで心配だから。あーぁ。。もうすでに気分が滅入ってる。隼人は嬉しそうだけど、私の気分は最悪よ。
「ほら、ティーきた。ケーキも食べる?」
「ううん、お腹いっぱいだからいい」
「そっか」
全くわかってない。
私には凄いストレスなのよ、隼人。
荷物も多くなるし、どのバックに入れよう。。
ロッカーに入るかな。。。
あーぁ、神様、台風呼んでください。月曜日に。。
次回、「だから言ったじゃん!」
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沖縄を舞台にした小説です。H大学は架空の大学です。
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