「平清盛」20話/〜「絆」を否定された松ケンの悲しみ | どら☆ぶろ〜テレビドラマ感想ブログの決定版

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朝ドラ「ごちそうさん」「あまちゃん」のあらすじ・感想が日課です。
旅行記も稀に書いています。

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◎あらすじ(ネタバレあり)
朝廷では鳥羽法皇(三上博史)の死によって、後継者をめぐる争いが勃発した。
鳥羽院の死の直前に天皇として即位した後白河天皇(松田翔太)と、
その兄・崇徳上皇(井浦新)との争いである。

天下を分ける戦いに備えて、武士は後白河天皇側か崇徳上皇側のどちらにつくのか決断を迫られる。

源氏は為義(小日向文世)と一門が崇徳上皇側につき、為義の嫡男・義朝(玉木宏)は後白河天皇側についた。

親子で対決する源氏の姿を見た清盛は、
「平氏一門は結束してどちらかにつく。一門が結束することが絆である」と宣言する。
しかし、どちらにつくのかはまだ発表していなかった。

清盛の狙いは亡き父・忠盛(中井貴一)との野心であり志である「武士の世を作る」ことだった。
決断を先延ばしにすることで、報奨を吊り上げ、味方についた側に恩を売り、忠盛との目標の「政治に携わるために公卿に昇進する(正三位以上になる)」事を目論む清盛。

そんな中、清盛は後白河天皇に呼ばれる。
後白河天皇から野心を見透かされた清盛は、
「今の世で武士の力を最も理解しているのは後白河天皇だ」と判断し、後白河天皇側につくことを決意する。

翌日、平氏の棟梁として「後白河天皇につく」と一門に発表した清盛。
その発表は平氏の中で波紋を呼んだ。
叔父・忠正(豊原功補)は清盛に「自分と清盛には何の絆もなかった」と言い、崇徳上皇側につく。

平氏一門の絆と結束を掲げたが、忠正の裏切りに茫然とする清盛。
しかし、平氏の棟梁として後白河天皇のために出陣するのであった。

こうして、朝廷・平氏・源氏がそれぞれ身内を喰い合う「保元の乱」の火蓋が切って落とされた。



◯「保元の乱」ちょこっと解説
登場人物が多く、関係性も複雑なので、かる~くまとめてみた。

☆保元の乱とは
鳥羽法皇の死後、後継者をめぐって兄弟である後白河天皇と崇徳上皇が、新興貴族と藤原摂関家、武士を巻き込んで起こった争いのこと。


☆後白河天皇側
後白河天皇(松田翔太)・・・鳥羽法皇の在命中に即位を行った。鳥羽法皇と璋子(檀れい)の子。両親に愛されず、その代償に権力を渇望する。
美福門院・得子(松雪泰子)・・・亡き鳥羽法皇の寵妃であり、鳥羽法皇の死の際に国政を託された。
信西(阿部サダヲ)・・・後白河天皇の後見人であり新興貴族。藤原摂関家の持つ実権を掠め取ろうとする。
藤原忠道(堀部圭亮)・・・藤原摂関家・忠道(國村隼)の嫡男で、藤原摂関家内での権力を弟・頼長に取られたため、美福門院と手を組み頼長の失脚を図る。
平清盛(松山ケンイチ)・・・本ドラマの主人公。「武士の世」を目指し後白河天皇側につく。
源義朝(玉木宏)・・・源頼朝・義経の父であり、源氏の棟梁。

☆崇徳上皇側
崇徳上皇(井浦新)・・・鳥羽法皇の第一子であるが、実態は白河院(伊東四朗)と璋子の密通の子であり(本ドラマではそういう設定)、鳥羽法皇在命中から冷遇され続け権力を渇望する。
藤原頼長(山本耕史)・・・藤原摂関家の次男で資質があったが、奢り故に新興貴族等の恨みを買い、左遷される。権勢の巻き返しを図るため崇徳上皇を祭り上げる。
平忠正(豊原功補)・・・清盛の叔父ではあるが、平氏の血が流れていない清盛をよく思っていない。
源為朝(小日向文世)・・・源義朝の父であり、鳥羽法皇の在命中から頼長に忠誠を誓っていた。


◎みどころ

「絆」を断ち切られたそれぞれのキャラクターたちの苦しみと悲しみ

◯おもしろポイント
①「お前との絆なんかない」と豊原功補に言われた松ケンの悲しさ
平氏の血を持たずとも、父である前棟梁の中井貴一との絆を信じ、平氏との絆を信じて平氏の棟梁となった松ケン。
中井貴一との絆を何より信じ、平氏一門を愛し、信じていた。
また、「武士の世を作る」という信念・野心を中井貴一と共有し、ひたすら平氏一門の結束を重んじてきた。
同時期に源氏が内紛を抱えていることを知り、なおさら一門の結束を願い、信じる。

それでも、「血がつながらない」事を理由に一門から反発を受け、豊原功補から
「お前との絆なんか最初からない」と全否定され、一門内に敵味方を作ってしまう。

自分が最も力を入れてきた部分を否定された悲しさや悔しさ、虚しさが一気に脳裏を駆け巡る。
動揺し、膝を落として呆然とするが、平氏の棟梁として指揮を取る責務がある。

自分の感情と現実の折り合いを付けなければならない「棟梁」としての責務もまた松ケンにのしかかる。(その塩梅をつける松ケンの演技も清盛が憑依したかのようで素晴らしい)

そして、「松ケンと絆はない」と言いつつも、必ずしも本心ではない豊原功補。
本心ではない事を敢えて告げることで一門の結束を促す(松ケンの判断に反発した弟・西島隆弘を諌めるために敢えて敵に回った豊原功補、という設定)姿も見ていて辛い。


②言葉を交わすことなく決裂した玉木宏と小日向文世
平氏よりも早く朝廷への返事を出した源氏。
しかし、その回答は親子で全く異なるものであった。
山本耕史への義理立てで井浦新側につく父・小日向文世と
武士の世を作るという信念のために松田翔太の可能性にかける子・玉木宏。

お互いを心の底で思い合い、刀を取る事(出陣)をためらう玉木宏。
(ためらう玉木宏に「小日向文世と決裂したままでいいのか?」と心情を汲み取る側室の武井咲に、武士としての信念を貫くよう刀を差し出す正室の田中麗奈。その演出も演じ分けも見事!)
それでも信念を選び、父や源氏一門と決裂する判断をする。

この決裂では、父と子の対面のシーンはなかった。(前回までの回で幾度か直接対決はあった)
対面せずに事実を通してしか相手の状況を知ることのできない親子関係もまた、哀しい。


③兄弟なのに相手への関心すらない井浦新と松田翔太
父である三上博史に共に疎まれ、権力の座から遠ざけられていた井浦新と松田翔太。
父の在命中は会話くらいはあった(でも仲良くはない)が、後継者争いという名目の貴族や摂関家の勢力争いに巻き込まれて会話がないどころか、あれよかれよという間に事態はどんどん動乱に向かっていく。
巻き込まれたが最後、生きるか死ぬかしかない。
ともに親に愛されなかった故の代償に権力を渇望している、ある意味鏡のような二人。
それでも相容れる事は無かった。
(政権争いでは当然のことだけど)
本人らに非があるわけではないのに(松田翔太は素行が悪かったけど)、時代や趨勢に翻弄される悲劇がそのまま映しだされている。


④折れた烏帽子と乱れた髪
番組冒頭で、政権奪還のために井浦新に接近する山本耕史。
雨が降って、服は濡れて、烏帽子は折れ、髪は乱れてところどころ後れ毛が見える二人。
権力闘争に負けた者の惨めさや、落ちぶれた様子がよく表現されてて、次回の「保元の乱」での敗北を連想させる演出だった。
演出の芸が細かく、また使い所も非常に秀逸で一瞬足りとも、画面の隅々まで目が離せない。



◯ツッコミポイント
緊迫した45分だったので突っ込みどころがなかった。
しかし、松ケンの家臣の加藤浩次が「戦やで~」とやたら楽しそうに話してたのになぜか和んでしまった。
「朝廷を二分する戦いも庶民にはぶっちゃけどうでも良かった」という当時の世相を表してる気もして面白い。


◯つまらなポイント
なし。
緊張感がありすぎて気が抜けない45分だった。
やっぱり人物関係が複雑で話も急展開で神経を使う。
HPにはわかりやすい解説があるんだけど、HPまで見る視聴者がどこまでいるのか疑問だ。


◯清盛奇行(きよもりきこう)
何かと奇行の目立つ平清盛(とその周囲のキャラたち)。そこで、ドラマ本編終了後の「清盛紀行(きよもりきこう)」をパロって清盛たちの奇行を紹介することにした。

今回は特になし。動乱で奇行はお休みらしい。