その「家政婦のミタ」の脚本家・遊川和彦とダメな父親役・長谷川博己の対談が実現した。
CSチャンネル「日テレプラス」で3月11日(日)18:00~18:30に放送された内容を見ることが出来たので、対談内容を大まかにまとめてみた。(敬称略)
遊川和彦・・・脚本家
代表作は「家政婦のミタ」(2011年)、「女王の教室」(2005年)、「GTO」(1998年)
長谷川博己・・・俳優
代表作は「セカンドバージン」(2010年)、「家政婦のミタ」(2011年)、「運命の人」(2012年)
◯「家政婦のミタ」タイトルネームの由来は?
長谷川
「はじめにドラマのタイトルを聞いたときはコメディーだと思った。」
遊川
「そもそも家政婦を主人公にホームドラマを作るという話があった。その際に”家政婦は見た”とのダジャレを思いつき、タイトルでのウケを狙った。」
◯なぜ家政婦ドラマを作ったのか?
遊川
「ホームドラマってそもそも作るのが難しい。
家族という集団の中に”家政婦”という異物を混入させ、その家政婦を主人公にすることが面白いと思った。また、家政婦という題材も珍しかった。
家政婦を主軸にその家族の抱える問題に向きあうというテーマが面白そうだと思ったから。
構想自体は直感で5秒くらいで思いついた。」
◯長谷川博己演じるダメ父役はどうしてできたのか?
長谷川
「(自分の演じた役は)ダメ父なんだけど、共感できる部分もある。
実は遊川の実体験に基づく部分があるらしいので・・・」
遊川
「自分の亡くなった父が(長谷川の演じたような)ダメ父だった。
父性がなく(ドラマの設定と同じように)子供4人作っておいてあとは知らんぷり。
男って、そういう”流されてる”部分がある。”とりあえず子供作っときゃ、妻を安心させられて、義務は果たした”みたいな流されてる部分。子供を作って放置して、しばらくして妻に問い詰められたら”安心させるためにもう一度子供を作る”という繰り返しで4人産ませた。
”自分の父もこうだったのかな~”と思って長谷川のキャラ設定をした。
長谷川にもそういう”優しいような冷たいようなイメージを感じたからキャスティングした。
しかし、長谷川は期待以上の演技をアドリブで演じた。」
◯長谷川博己のアドリブはどこ?
①「俺はもうダメだ!」と川に入るシーン
遊川
「俺は川に入れとは言ってない。川に入ったら完全にイッちゃった奴じゃん。それを長谷川は演った。」

その後の衣装さんが大変そうだ・・・
②ミタさんのカバンを開けようとするシーン
遊川
「脚本には”カバンを開けようとする子供たちをオロオロしながら見つめる”としか書いていない。なのに長谷川はアドリブで率先してカバンを開け始めた。しかもノリノリで楽しそうに。」

子供を押しのけ「ドライバー持って来い!」とかノリノリの長谷川博己
③愛人に復縁を迫る場面ををミタさんに見られるシーン
遊川
「野波麻帆(愛人役)に”行かないで”と言うシーンは脚本にあったが、”抱きつく”とは書いていない。それを長谷川は野波麻帆に抱きついた。
家族にも愛人にもどっちつかずのダメな部分を家政婦に見られてさらに”ダメダメさ”を象徴するシーンで、あの抱きつきは凄く効果的だった」

「抱きつけ」とは脚本に書かれていないそう
④野波麻帆を寝取った同僚が「野波麻帆は単なる遊びだ」と言っているのを知り、その同僚を殴るシーン
遊川
「確かに脚本には”野波麻帆を寝取った同僚に「愛ってなんなんだ、教えてくれ」と詰め寄る”とは書いた。
しかし、殴りかかって泣き叫びながら問い詰めろ、とは書いていない。
でも長谷川はそうやった。そこまでして役を確立した長谷川の役者の力はスゴい」
長谷川
「撮影に毎回遊川が来て、何度も何度も打ち合わせや話し合いをして、役のイメージを膨らませた。あれだけの打ち合わせがあったから役作りも困難ではなかった。」

同僚を殴り倒し、さらに馬乗りになるのを他の同僚たちに抑えつけられる・・
⑤最終話でのミタさんとの最後の食事シーン
遊川
「ワンクール、各キャストに演じさせてみて、みんな”ミタさん”へのそれぞれの想いがあるだろうから、役者にミタさんへの思いを好きに言わせようとした。
長谷川は最初は”僕はいいです”とか言いながら、演じ始めたらやたら長いセリフを言い始めた。
しかも松嶋菜々子は、いつ終るかわからない長谷川の長いセリフをぶっつけ本番で受けてくれた。」
長谷川
「いや、自分も最初は”言わなくていいや”って思ってたが、他のキャストがあまりにもいいこと言うから、
”自分も負けてられない”って気持ちになって、あんなにしゃべることになった。」
◯「ミタ」のイメージは「宇宙飛行士」と聞いたが本当は?
遊川
「(宇宙飛行士は)ミッションを果たして地球に帰る。ミタはミッションを果たして帰路に着く。
ミタが家政婦としての仕事をミッションとしてしか考えていないという点で宇宙飛行士である。
阿須田家(あすだけ・長谷川博己の役の家)は”アース(地球)だ家”ってダジャレで。
でも、宇宙飛行士であるミタが第三者的に地球である阿須田家を見る感じで。」
◯なぜ「ミタさん」にはこんな暗い過去が?
遊川
「阿須田家自体があ”母が自殺して、周囲から蔑まれて大変な状況。
そんな大変な状況を打破できる人間は、さらに重い過去を持った存在が必要だった。
ミタさんによって救われた阿須田家の面々だからこそ、今度はさらに深い傷を持つミタを何とかして救おうとする姿を書きたかった。」
◯遊川和彦がドラマ制作の時に「原作あり」ではなく「オリジナルストーリーにこだわるのはなぜか?
遊川
「他のスタッフと協力してドラマを作成する際に、何かをこなす度に”ハードルを超えた感”がある。オリジナル脚本だとその”ハードルを超えた感”が何物にも勝るから。みんなで沢山のハードルを超えて沢山の視聴者がついていてくれることがドラマ制作者の醍醐味である。
また、製作者って常に”自分の知らない新たな自分”を求めていたりする。試行錯誤の末に出来上がった新たな自分の作品に対して感慨もひとしおである」
◯実際に演じていてきつかった部分は?(長谷川へ)
長谷川
「コンディションが悪い時とか、自分の思ったような表現が出来なかった時。」
遊川「長谷川がぼやくんだよ。演技がうまく行かないと俺のとこにやってきてぼやくんだよ~」
◯「ミタ」の決めセリフが小学生などの間で流行したがそれは狙っていた?
遊川
「いや、狙うのは難しいから特に狙っていないし、そもそも”決めセリフ”としての位置づけもなかったから、反響にびっくりした」
長谷川
「でも、そういうふうに子供が真似するのが嬉しい」
◯ミタの今後は?
遊川
「ドラマの終わりが続編が出来そうな終わりだったから、実際に”続編出来るじゃん”って言われて腹が立って”続編やらない”って言った。
でも、連ドラ制作に対して
”アタルから作ろう”
”前シリーズヒットしたから少しクオリティ下げても大丈夫”
という安易な発想は持ってほしくない。そんなオファーも受けるキャストにも失礼だ。
連ドラに対して恥ずかしくないものを作り続けたい。」
◯おもしろポイント
遊川和彦の連ドラ理論が見えた!
「原作ありきのものよりも、新しい自分を模索しながら創り上げた作品のほうが達成感があるし、出来上がったものをスタッフにまず見てもらう時の面持ちもぜんぜん違う」
「連ドラとして恥ずかしくないものを作りたい。”ヒット作の二匹目のドジョウ”や続編”といった安易な発想でドラマを作るのは連ドラに対して失礼だ」
などなど、遊川和彦の本音が見えた。
驚いたのは、私が「連ドラに期待するもの」と全く同じだったこと。
映像、音響、キャスト、が揃うドラマだからドラマにしかできないことがある。
文章で全てを表現する小説には小説にしか出来ないことがある。
文字と絵で魅せる漫画には漫画にしか出来ないことがある。
それらは全て長所、短所が異なり、全くの異物である。
「0から1を創りだす」のは本当に困難なことだし、さらに「面白い創作物」を作るのはこれまた非常に困難である。
遊川和彦は年に1本脚本を書いているが(表に出してるのだけで)、それがどれだけ辛くて苦しいことだろうか。
それでも「連ドラなめんなよ!」とばかりにオリジナルを書き続ける。
家政婦のミタのヒットで、遊川和彦はじめ、連ドラ自体の「脚本家」への脚光がますます増した。
それは視聴者が「もう小説の映像化や韓流リメイクはウンザリ」って思ってたところにたまたま大ヒットが出てきたという偶然性の要素が大きい。
放送時期が異なれば数字はもっと変化した可能性はある。
今や「時代の寵児」の遊川和彦だけど、そういう雑音に振り回されること無く、
「連ドラなめんな!」とか思いながらご自身のペースで作品を作り続けて欲しい。
◯ツッコミポイント
脚本家はインタビューなれしていない!
脚本家は脚本執筆が本業だから当然だけど、遊川和彦の話し出したら止まらないこと!
「遊川和彦×長谷川博己 対談」のはずが9割遊川が喋ってる。
エビフライの隣のパセリ状態の長谷川博己。
30分番組でカットアリだろうから、おそらく収録自体は3時間以上かかってるはず。
一体どれだけ喋ったんだ、遊川?
しかもしかも喋りが下手で「こういうことが言いたいのかな?」って汲み取りが殆ど。
喋りまくった割に中身がない。
◯つまらなポイント
対談って大したことを喋ってない時間が8割以上!
職場で議事録を書くときにも思うことだけど、体系立てて話はしてないし、言いたい放題話で話が前後するからもうメチャクチャ・笑
なにはともあれ、「家政婦のミタ」を面白く視聴させていただきました。
遊川和彦さん、長谷川博己さんはじめ、キャストの方々ありがとうございました。
今後も面白いドラマをお待ちしております。