「タイトロープの女」最終話(第6話)/〜なぜ「タイトロープ」なのかが分かった。 | どら☆ぶろ〜テレビドラマ感想ブログの決定版

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連続ドラマの感想やあらすじ(放送回までのネタバレ含む)などについてを主に書いてます。
目標とコンセプトは「面白いドラマをより多くの人に見てもらいたい」です。
朝ドラ「ごちそうさん」「あまちゃん」のあらすじ・感想が日課です。
旅行記も稀に書いています。

火曜日22時~
NHK総合(全6話)



◎あらすじ(ネタバレあり)

父の子でないと知って悩む由梨(池脇千鶴)。
悩みつつも、会社では起死回生を賭けたカラーワイヤーの開発を続けていた。

そんなところに、後妻・恭子(高岡早紀)が倒れたと聞く。
病院に駆けつけた由梨は恭子に
「(血はつながっていなくても)父は自分にとって父だった。そんな父の残したあなた(恭子)と一緒にいることは義務であり、父への恩返しである」
と告げる。

直後に恭子は失踪する。
同時に恭子が雇った会社の顧問税理士永沢(小澤征悦)もいなくなる。
恭子は由梨の父と出会う前に働いていたクラブのホステスとして再び働き始めるのだった。

会社はカラーワイヤーの制作の大詰めを迎えていた。
PRに精を出す由梨に、
「ライバル企業が由梨の発案したカラーワイヤーをより安価で受注している」
という情報が入る。
社内会議でその問題を話しあっている最中に、副社長の小野田(笹野高史)が突如現れる。

小野田は
「ライバル企業にカラーワイヤーの情報をリークしたのは自分で、今はライバル企業の営業部長におさまった」
と高々と告げ、辞表を出して会社を去る。

後日、偶然恭子が働くクラブに小野田が現れた。
恭子はさりげなく、小野田から情報を聞き出す。

一方会社では、カラーワイヤーの増色で対抗するという方針が定まった。
コストダウンも視野に入れ開発、PRに精を出す。
しかし由梨はコストダウン、特に人件費削減は行わず技術力、商品の質で勝負に出る。

が、価格競争に敗れ結局カラーワイヤー勝負はライバル企業に負けてしまった。
社員に心から詫びる由梨に、
「ここが踏ん張りどころ」
「前社長(由梨の父・田村亮)は由梨を心底可愛がっていた。だから社員に囲まれている由梨を見て今頃
笑っている」
と激励する社員。

同刻、恭子の店でパーティーをする小野田に大立ち回りをする恭子。
その話は由梨にも知れる。
また、同時に恭子が「遠くに行く」「次は医療用ワイヤーの時代だ」と呟いていたと耳にする。

「恭子に会いに行け」という永沢の言葉を聞き、
「今のままでは恭子に合わせる顔がない。会社をキッチリ運営させる」
という決意をする由梨。

3年後、恭子の呟きの医療用ワイヤーで会社を再建させた由梨。
会社を再建させてから、由梨は恭子に会いに行く。

恭子は遠くの土地で旅館の女将をしていた。
3年ぶりの再会にお互い思いの丈を交わす由梨と恭子。

「最初は大嫌いだった。合わないとも思った。でも、会いたかった。会えてよかった。」
と。










◎みどころ

◯おもしろポイント
①ストーリーが緻密に練られてる(原作ありきだけど)
「タイトロープの女」ってタイトルを見て主人公の由梨を指すのだと思っていた。
でも、最終話まで見て後妻の恭子の事、二人の関係性を指すのだと分かった。
タイトロープにかける二人の思い、タイトロープに繋がれてる二人の縁。

しかもタイトロープとは絡みあって1本のロープである。
由梨と恭子もそれぞれの置かれた立場や関係性、二人を繋ぐタイトロープ(会社)によって絡みあって最後に一つの縁になる。
二人こそが1本のタイトロープなのである。

父が死んで、一人娘と残された愛人出身の後妻とで会社を巡って対立し、
娘は父の実子でないと判明し、
と散々乱高下を繰り返したストーリーだったけど、その乱高下も
「タイトロープを構成する絡みつき」
だった。
ドラマの内容はもちろん、タイトルにも意図が込められていて、本当に緻密な作品だった。


②会社の雰囲気が「ALWAYS~3丁目の夕日」
社員が本当に人間臭い。
社長が交代すれば、噂で持ちきり、陰口も叩く。
給与の話になれば不安げにもなるし、思い切って疑問もぶつける。
成功すれば喜ぶし、失敗すれば悲しむ。でも、励まし合ったりもする。

現実の社会では抑えられがちな気持ちや行動を「ドラマならでは」でキッチリ表現しているところが、ノスタルジックで昭和30年代のような雰囲気を出している。


③ワイヤー制作シーンが「プロジェクトX」
ワイヤー制作の工場のシーンがリアリティありまくり。
ワイヤーの糸を編んでいるシーン、金属を溶かしているシーン、太さを調節しているシーン、色付けのシーン、ワイヤーを巻くシーン。
とれもこれも「ワイヤー工場ってこんな感じなんだ」と思わせる迫力がある。
おそらくプロジェクトXとかで取材したネタを元にシーンを作ってるのであろう。


④演技がとにかく一級品
主演、助演の誰もが旨い。当て書き(俳優や女優をイメージしてキャラクターを作ること)かと思う位。
「池脇千鶴上手いな」とかでなくて、
「由梨悔しいんだな」っていうキャラクターとして画面を見ちゃう。
泣き方や笑い方一つでも、キャラクターとして作りこまれていて、「恭子っぽいな」とか思う。
役者の凄みを見れた。


⑤演出も一級品
最後の由梨と恭子が再開するシーン。
二人の絡みあった関係性が1本のロープであるという象徴のシーンとして、
「二人が右手を少しだけ繋ぐ」シーンがある。
そのシーンでは、カメラは二人の顔ではなく手を延々と映していた。
少しずつ近寄って、指の3本程度を少し繋ぐ。その手と指を映す。
ここで、二人が「肩を取って抱き合って、遠目からその映像を撮ってる」みたいな事をしちゃうと台無しなんだけど、さすがNHKは分かってる。



◯ツッコミポイント
①自殺行為の小野田
会社で社員が寄り集まって「ライバル企業が類似品を安価で受注している」事について会議をしている最中に、ありえないいいタイミングで
「情報を売ったのは自分で、ライバル企業でポストももらった」
とか言いに来る。
一人で。
バカか。
フツー行かねーだろ。殴られるだろうし、下手すりゃ刺されかねない。
何でそんな自殺行為をやるんだ、小野田。(小野田には小野田の意地とかプライドがあるんだけど)
せめて電話とか、第三者連れてくとかしろ。


②霊感アラサーの由梨
カラーワイヤーの受注勝負に負けて、社員に支えられるシーンで、何故か由梨には死んだ父が微笑む姿が見えた。
・・・霊能力???
なぜ死んだ父の姿が(しかも都合よく社員と同様に由梨を励ましている)見える???



◯つまらなポイント
無い!!!!!
ストーリーも構成も演出もテレビというか映画レベル。
1シーンごとに魅せられて全6話で無駄がなく濃厚。
「見て良かった!」って心底思えた。