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緑ヶ丘ビーズ荘

読書とビーズ。

ロバート・J・ランディージ編。オチバレあるかもです。


ミステリに欠かすことのできない職業―殺し屋。

脇役・敵役に甘んじず、堂々と彼らが主役を張った15編を、

オールスターキャストでお送りします。



ホラー・幻想系が続いたので、久々に軽くミステリ読みたいな~と思いまして。

やはり無難にアンソロ。

とは言えテーマが殺し屋なので、ハードボイルド系が多いかな~。

本格ハードボイルドは、なぜか肌に合わんのよな…

と、それほど期待してなかったんですが、

本格ハードボイルドは少なめ・あっても短編なので読みやすく安心です。





ジェイムズ・W・ホール 『隠れた条件』


職人気質の殺し屋・メイスンの元を訪れた裕福な紳士。彼の依頼は一人息子の殺害だった。

メイスンが依頼人に突き付けた、取引の条件とは―


重い。

しかし一般人としての日常を崩さず、昔ながらのお値段で殺しを引き受けるメイスンが、

妙に魅力的です。

日常を崩さないだけの理性がありながら、圧倒的に狂ってる感じ。

もう悟りの境地にまで達してるかのような静かな厭世観と、

壁にかかった絵に隠されたバイオレンスが素敵。

シリーズ化しなかったのかな~続きが気になる終わりなのに…





バーバラ・セラネラ 『ミスディレクション』


女子刑務所を舞台に張り巡らされる駆け引き。

FBI、スパイ、二重取引。目的を達成するのは誰か?!


思わせぶりながらも状況が簡潔に把握できる幕開け。

→「あ~…どっちか痛い目に遭うのか~やだな~」と、いつの間にか肩入れしたくなるキャラ。

→キャラの特徴づけと、キャラ同士の交流を深めるきっかけになる特技が、スムーズに伏線へ。

→「その手があったか!!」と膝を打ちたくなるような、鮮やかなオチ。


セラネラさん!!誰?!

と、慌てて他の作品ないか検索したんですが、邦訳は無さげ…

ぐぐ、もったいない…!

 





クリスティーン・マシューズ 『ドクター・サリヴァンの図書室』


毎日診察に勤しむドクター・サリヴァンは、その患者の目を見て、

患者を様々なジャンルの書籍に見立てていた。

ロマンス小説でもなくSFでもなく、ミステリ…それもスリラーを求める彼の目的とは。


どこかで読んだことのある手触り…しかも和モノで…

と思ってたんですが、ようやく思い当たった。平山夢明さんのノリだ。

患者を書籍に見立てる…という細工が全く役に立っていない(結局患者関係なかったし)上に、

特に上手いこと言った感もないんですが、

元気なバイオレンスでどうにも印象に残ります。

両親のキャラが素晴らしい。




大外れって作品もなく、結構な読み応えでした。

とにかくセラネラさんが大ヒット。

他作品もこのノリ・勢いならぜひ邦訳してほしい~~~。


あと基本的に、女性が元気な作品は好感度上がりますね。









仁賀克雄編。

オチばれあり。構成上のオチもばらしております。



このジャンルでこのタイトルのアンソロ…

読んだことあるのも入ってるぽいけど、まあ外れんやろ!

と、自信をもって借りました。


読んだことあるのが入ってるどころか…

これ私持ってないっけ?家にあるよね?

と、読み終えたときのデジャヴ感がすごかったです。

でも持ってるやつは、あえてスプラッタ一派に喧嘩を売るような前書きはなかったし、

表題作の『ポオ蒐集家』も読んだことないし、おそらく別物…


でも私の持ってる怪奇と幻想も、

この、貝に同居人が喰われちゃう話がラストだったのは間違いないんですよ。

ホラーアンソロ界で、ラストに『水槽』を持ってくるのが流行っていたのか?





オーガスト・ダーレス『淋しい場所』


幼い子どものころの空想―友人とともに育んだ恐怖。

時の流れの中に、いつしか消えたはずのその怪物が再び…


いつかどこかで読んだきり、好みだったんだけど誰だっけ~、とふんわり忘れていた作品。

ダーレスさんでしたか!なんかクトゥルー関連の人だと思って、全くノーチェックだったよ。

闇方向に発揮された子どもの想像力…というテーマは、

昔、成毛厚子さんがめちゃ上手かったですよね~。

脳内で、あの端正かつバタ臭い絵で再生されました。

大変好みの味わい。






フィリップ・K・ディック『植民地』


理想的な植民地に見えた惑星が秘めていた危機!

想像を超える事態に、調査隊員たちはなすすべもなく犠牲となっていく…


電気羊を数ページで挫折した負い目から、なかなか手が出ないディック御大。

こんな星さん風の、オチの利いた短編もあるのか~。食わず嫌いはいかんな。

短編だけに、恐怖の発端からみるみるうちに被害が拡大!

スピード感あるし、オチにつながる擬態生物の特徴もウマい。


ただ…全く個人的な感覚なんですけど、

がっつりSFって、怪奇や恐怖ではあっても、幻想とはちょっと質感が違うんだけどな~…

ってコレは、編者の方への感想ですな。






ジョン・クリストファー『はやぶさの孤島』


恋人を失い悲嘆にくれるアンジェラは、紳士であるメロニッシュによって心を慰められていた。

彼の島を訪れたアンジェラの前に広がる楽園―

その楽園のために払われた犠牲に気づいたとき、彼女は…


今回発見の当たり作品。

2時間ドラマっぽい。好き。


恐怖や生理的嫌悪を扱うホラーで、しかも短編だどどうしても、

インパクト残すためにバッドエンドが多くなるじゃないですか。

こちらもソレ含めてホラーを求めてますし。


なのでこの短編も、

・絶対悪に気力を奪われ服従してしまう

・かえって悪の魅力に心を奪われてしまう

とかのオチかな~と思ってたんです。


が、ソコを乗り越えてガッツあるオチだった。

隼の力強さを存分に活かした、いいオチだな~~~。

鮮やかなインコの群と、隼だけが舞う荒涼としたラストの色彩対比が美しいです。




そうそう、ラストの『水槽』。

私、海洋生物ホラーあんまりなんですけど、

(どうしても珍味って言葉が胸を過っちゃうし…)


種々諸々の怪奇と幻想を味わったうえで、

「絶対こちら側(正気とか読者とか)に戻ってこないだろうな…」

ってご婦人の絶叫で〆るのは中々オツなので、

ラストがこれ!という印象は強いですよね。

文豪怪談傑作選 三島由紀夫集。東雅夫編。

あっ、オチバレあるかもです。



『仮面の告白』で挫折したイメージがでかい。

昼メロぽいのはわりと好みだった印象もあるんだけど、中々縁遠い三島さん。


コレはご本人が切腹されたためもあるかと思いますが、

こう…作品も、肉々しいというか質感が重くて硬いというか、そんなイメージ。

わりと色彩とか雰囲気重視の読書傾向だと、手を出しづらいものがあります。


が、信頼の文豪怪談傑作選シリーズなので手を出してみました。


またしても、文豪怪談傑作選の実績が積みあがる結果に。

えっ、これやっぱ川端康成とか森鴎外とか、明らかにジャンル外の人もチャレンジすべき…?






『切符』

仙一郎は、はっきりした証拠はないが妻を自殺に追いやった張本人と思われる谷に、

今夜こそは決着をつけてやろうと思っていた。

機会を伺い、仲間と連れ立って入ることになったお化け屋敷には、死んだ妻の気配が…


あ、そっち?そのオチ?!

という、驚きのオチが本当に思いがけなかったんで、まんまと驚きました。

途中、ホントは自分が死んでるのかな~と思ってたんですが。

スマートで小気味良いオチ…


というのもありますがソコをさておき。

はるか昔、まじめな読書好きの腐女子であった私は、

「腐女子の教養として読んどかんといかんか?」

という気持ちで三島さんに手を出したんですが、(動機が不純)

『仮面の告白』って、まったく腐界隈ではなかったんですよね~。当然ながら。


ところがこれは腐感性に触れるものがありました…!

どこがどうとはうまく言えないんですが…これは腐妄想イケるなという。

より具体的に言うと、絵柄は猫田リコさんで。





『孔雀』

遊園地で起きた孔雀の惨殺事件。

参考人として聴取を受けることになった富岡は、犯人ではないがその犯行に強く惹かれていた。

刑事とともに張り込んだ、夜の遊園地に現れる犯人とは…


このぐらい色味はあってほしいよね!

という豪華絢爛さがばっちり好みの一作。

大文豪に対してコレ言うのは、当たり前すぎて失礼かもですが、

やっぱ…語彙が豊富~~~!

畳みかけるように圧倒的な色彩描写。

ここまでやってくれたら、読む側の想像力もいらんわっつーくらいです。


抑えきれない自己の欲望…人間って本当に恐ろしいですね…

みたいなオチかな~と思ってたんですが、厳然と怪奇現象が出現。

ホラーに対する愛が感じられます。

犬はどっから連れてきた?とかの説明もないあたり、潔いな。





『月澹荘綺譚』

伊豆半島南端に、かつて侯爵の別荘があった。

私は、当時庭番をしていた老人と偶々出会い、月澹荘に纏わる思いがけない真実を聞くことに…


タイトル!

お屋敷!特殊な性癖!惨劇!


と、どこをとっても好みでない要素がない。

「こういう話を書くなら書くと、もっと早く言ってくれないと…」

と、三島さんの霊に愚痴りたいほど好み。


自分も加担した忌まわしい性犯罪の記憶に直結しているにもかかわらず、

「あの美しい若奥様が、庭の花を摘まれたり、茱萸の実を摘まれたり、お女中を連れて散歩をされたりした場所だからだ」と、

何十年たってもお邸跡を訪れるときには、必ず着更えるお庭番の想いが切ない…





雑記

・収録されている『小説とは何か』に、

「俺が舞良戸って書いたら舞良戸そのものを思い浮かべろ。浮かばなかったら調べろ。何となく~で流して調べない奴は俺の客じゃない」

と、頑固おやじのラーメン屋みたいなことを言っておられる。

ストーリーの流れを把握するのに問題ない限り、なんとなくで流しまくる私は、明らかに拒否られてますよねー…

が、書かれたのが40年以上前なんで、もう時効ってことで許してほしい。

・2・26事件って、「若い軍人が決起したが失敗した」という知識しかないんだけど、

『英霊の聲』の軍人さん…なんかストーカーぽい思考回路でちょっとやだ。