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緑ヶ丘ビーズ荘

読書とビーズ。

ディック短編傑作選。フィリップ・K・ディック。大森望編。

あ、もろにオチばれあります。


ご高名はかねがね…そして、アンソロなんかで絶対結構巡り会ってるはずの巨匠。

にもかかわらず、あんまり自主的に手を伸ばすことないな~~~。

ガチガチのSF代表って感じだもんな~~~という、縁遠いお方です。


短編集だからまあイケるか?

とチャレンジしてみたんですが、タイトルを眺めた段階で縁遠い理由がわかったよ!!


表題作の『変数人間』もなんだけど…

『CM地獄』『スパイは誰だ』『超能力世界』…


タ イ ト ル セ ン ス !!!


待って、理系の方・ガチSFファンの方はこういったタイトルで

「心魅かれるわ~~~」「ピンと来たわ~~~」ってなるの???


広い意味でSF系のタイトルで印象に残るっていったら、

『10月はたそがれの国』とか『ゲイルズバーグの春を愛す』とかだもんな~…

カルチャーギャップがすごい。


と、恐る恐る読み進めたんですが、これがまあ面白かった!

年取って好みが変わってきたのか…?





『スパイは誰だ』


姿なき敵との終わりなき戦い…しかし真実は明らかになりつつある。

仲間の中に裏切者が…!!!



と、いう現代読むと結構冒頭から、

「あ、電波の方の話?」ってのは察しやすい話なんですが、上手い!!!

冷静に論理的に二転三転。

短編の醍醐味を感じさせるスピーディーさはもちろんですが、

ラスト間際、サイコ野郎にはサイコ野郎なりの倫理観があるのだなあ…

と、感心させておいてからの容赦ない破局が素晴らしかったです。

どんな未来が待ち受けているかを、無理なく予言しているのもニクイではないか。





『不適応者』


超能力者が厳しく取り締まられる社会。

超能力者として監察庁に追われることになったエガートンは、

自らの正当性を主張するため行動に出る…



『スパイは誰だ』もなんだけど、

自己・他者の正気・正義を客観的に証明する術はない、というテーマがめちゃめちゃ上手くない?

なんか個人的に嫌なことでもあったんですか…?


管理社会への恐怖…と見せかけといて。

人類の自主独立性への信頼…と見せかけといて。

オチが効いてるな~~~。


解説にも書かれてますが、高速艇の実る植物という小道具が素晴らしい…

あ~~~SF!SFだわ!!!という新鮮な感動を味わいました。





タイトル…って思ってたんですけど、あんまり面白かったんで、

「まあ…このくらい骨太なタイトルの方が、往年の傑作SF!って感じがするかな…」

と、評価が変わるほどでした。









星雲賞短編SF傑作選。大森望編。

大森さんも常にSF愛溢れすぎてて信頼できますよね。


ファン投票で決まる星雲賞受賞短編をそろえた、日本SFの歩みをたどる一冊。

バラエティ豊かな作品群から、その時代の雰囲気も感じ取れます。


そもそも私の好み傾向が割と限定的なので、時代にかかわらず、

「少し不思議」SFばかり印象に残っちゃうんですけどね、結局。






『白壁の文字は夕日に映える』 荒巻義雄


精神疾患自立支援施設で出会った美しい女医。

彼女の患者には、人類の想像を超えた力が秘められていた…


紹介分にもある通り、架空戦記の大御所ってイメージだったんでノータッチだったんですが、

すごく良かった…こういうヒンヤリした質感の短編、とても好み。

こういう人類を超える者を描くのって、ちょっと時代を感じますね。

小松左京とか、スランだっけ?なんか超能力のやつ。

こう、人類の発展はここが最盛期なのでは…?と思うほど当時発展してたんですかね?

人類以上の存在を描いて印象的、ってなかなか昨今お目にかからない気がする…。

「ここから先」を見晴らすような、足元がスースーする感じ。


あんまり好み作品がなかった『人間みな病気』ってアンソロを同時期に読んだんですが、

それの島田さん作品でも思ったんですけど、

現代だと、こういう実在の症例を基にしたSFって難しいかもな~。






『くるぐる使い』 大槻ケンヂ


死期の迫った老人から語られた懺悔。

それは見世物のために自ら狂わせて、自ら殺した少女の話だった。


やっぱいいなあ、大槻さん。

なんと私が苦手な恋愛ものなんですが、全然OKです。

何しろ身体的接触はおろか、そもそもお互いの想いすら交差しない。おそらくは死んでからさえも。

という、完成度の高いプラトニック。もちろん悲恋。

民俗学系というか実話怪談系のセンスが光る。

まあ好まない理由がないよね!って感じ。

「ガラスの破片のような夕暮の光」「果実酒色のワンピース」といった、

ツボを押さえた少女漫画成分の高い文章と相まって、

マンガか映画かドラマで、実際に映像を見たような気分にしてくれます。






『ダイエットの方程式』 草上仁


億万長者になった幼なじみからのデートの誘い。

自堕落な生活を送っていた主人公は、肥満嫌悪症の彼を捕まえるために、

1か月で18キロのダイエットを志す!

 

計算高い女が痛い目に遭えばいいのに…って話なんでしょう~~~?

あんまりおっさんの怨念を押し出されるとちょっとな~。

と、冒頭から乗り気でなかったんですが、全っっっ然違いました。

文字通り命がけの努力の果てに、打算なんか足元にも及ばない強さを手に入れるという…


ば…ばかばかしい!!!素晴らしい!!!めっちゃ元気出たわ!!!


1月から結構、冬場の精神低迷期長いな…って感じで、

アンソロ読むのもリハビリ感覚なくらいだったんですが、ものすごく気分が浮きました。

本屋に走ったんですが、この方の短編集が見当たらず…

次の休みにAmazonあたりでじっくり探さねば。